政治家は靖国神社と訣別すべきである

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例によって産経新聞が「主張」欄で靖国問題について妄論を開陳しています(末尾に全文引用)。

いわく、首相は国民を代表して靖国神社に参拝せよ。
いわく、靖国神社に参拝しない民主党は中国にこびているのだ。

そこでなるべく「主張」の文章を活かして、この主張を検討してみたいと思います。

靖国神社にまつられている戦死者は、私事でなく、国のために尊い命を捧げた人たちである。

まったく分かっていません。分かっていてとぼけているのかも知れませんが。祀られているのは遺族との紐帯を有した「戦死者」ではなく、その霊が昇華した一柱の「神」です。

また「戦死者は……国のために尊い命を捧げた」というのも不正確で、戦死者もあり、自殺者もあり、刑死者もありなのですから、正確には「対象者は、国のために尊い命を捧げたと靖国神社が判定した死者」と言うべきです。

ですからその祭神とは、私的宗教教団である靖国神社が、戦死者を、“私事でなく、戦争で国のために尊い命を捧げたことによって神になった”という宗教思想のもとに、私的に神として祀っているにすぎません。

首相が国民を代表して慰霊することは国の指導者としての務めだと思われる。

「戦死者は神になる」
「その神は実在する」
こういう宗教思想をもった私的宗教教団の祭神を、多様な宗教思想を信じている国民を代表して首相が慰霊することが、国の指導者としての務めだとは到底思われません。

以前からのマイミクさんたちはご存じでしょうが、私は毎年、8月15日に護国神社(姫路)に行っています。が、一私人たる私と、公的存在である首相の行為の意味はまったく違うのです。国民を代表する国の指導者だからこそ、総理は私的宗教教団などに参拝してはいけないのです。

麻生首相が8月15日に靖国神社を参拝することを期待していた遺族や国民は多かったはずだ。

麻生首相が8月15日に靖国神社を参拝することを期待していた遺族や国民が多かったか少なかったかは知りませんが、国民多数の反対を押し切って消費税を導入したことを産経新聞が称賛した一例をとってみても、同紙が多数意見の尊重という価値観を絶対視していないことが分かります。都合の良いときだけ世論を持ち出すご都合主義は如何なものでしょうか。

鳩山代表も海外メディアとの会見で「(首相になっても)靖国神社を参拝するつもりはない」と語った。中国に媚びた姿勢と受け止められてもやむを得ない。

産経新聞が正しく述べているとおり、

小泉純一郎元首相が毎年1回、靖国参拝してきた平成13年から18年にかけ、民主党は常に首相参拝に反対してきた。その間、代表が鳩山由紀夫、菅直人、岡田克也、前原誠司、小沢一郎氏へと代わったが、「靖国神社に『A級戦犯』が合祀されているからだ」という反対理由はほぼ共通していた。

反対理由はこのように明確であって、中国が気分を害するから参拝しないなどと述べていないのですから、「中国に媚びた姿勢」であると決めつける根拠はどこにもありません。

主張子によれば、

岡田克也幹事長が今月初め、中国メディアに対し、「靖国神社に第二次大戦のA級戦犯が合祀されている以上、日本の首相は参拝すべきではない」と述べたと伝えられている。鳩山代表も海外メディアとの会見で「(首相になっても)靖国神社を参拝するつもりはない」と語った。

ここでも参拝しない理由は、A級戦犯の存在だと述べており、中国に気遣ったとは言っていません。

なによりA級戦犯とは、中国を含まない連合国が定義したものであり、中国が決めたことではありません。ですから、「中国に媚びた姿勢と受け止められてもやむを得ない」というのはただの牽強付会なのではないでしょうか。

中国が日本の国家首脳が靖国を公式参拝することに批判的であることは周知の事実ですが、中国の指摘はまことに正しいと思います。それを言っているのが外国だから、内容が正しくても反発すべきだとの言い分は、まったく子供じみていて、国際社会では歯牙にも掛けられないでしょう。

このような自閉的思考が日本外交を困難に陥れてきたのですから、やはり政権交代しないといけないなあというのが、私の感想です。

「主張」靖国神社参拝 指導者の務めはどうした
産経新聞2009/8/12

麻生太郎首相が終戦記念日の8月15日に靖国神社を参拝しない意向を示唆した。その理由を「(靖国神社は)最も政治やマスコミの騒ぎから遠くに置かれてしかるべきものだ。もっと静かに祈る場所だ」と述べている。本意とすれば、いささか残念である。

麻生氏はかねて、靖国神社の非宗教法人化を主張していた。だが、それとは別に、麻生氏は現在の宗教法人としての靖国神社にも敬意を表し、平成17年に外相になる前は春秋の例大祭に参拝していた。首相になってからも、例大祭に真榊(まさかき)を奉納し、戦没者に哀悼の意を捧げてきた。それはそれとして評価されるべきだ。

だが、さらに踏み込み、麻生首相が8月15日に靖国神社を参拝することを期待していた遺族や国民は多かったはずだ。靖国神社にまつられている戦死者は、私事でなく、国のために尊い命を捧げた人たちである。首相が国民を代表して慰霊することは国の指導者としての務めだと思われる。

確かに、今日のような状況下で首相が靖国参拝すれば、中国や韓国などが反発し、それに便乗した反対勢力が騒ぎ立てることが予想される。首相が言う「静かに祈る場所」の環境が一時的に損なわれる懸念はあるが、それは参拝する側の責にのみ帰すべき問題ではなかろう。難しい判断ではあるが、麻生首相に再考を求めたい。

小泉純一郎元首相が毎年1回、靖国参拝してきた平成13年から18年にかけ、民主党は常に首相参拝に反対してきた。その間、代表が鳩山由紀夫、菅直人、岡田克也、前原誠司、小沢一郎氏へと代わったが、「靖国神社に『A級戦犯』が合祀されているからだ」という反対理由はほぼ共通していた。

今年も、中国中央テレビの報道などによると、岡田克也幹事長が今月初め、中国メディアに対し、「靖国神社に第二次大戦のA級戦犯が合祀されている以上、日本の首相は参拝すべきではない」と述べたと伝えられている。鳩山代表も海外メディアとの会見で「(首相になっても)靖国神社を参拝するつもりはない」と語った。

中国に媚びた姿勢と受け止められてもやむを得ない。

靖国問題では与野党内に、いわゆる「A級戦犯」分祀論や無宗教の国立追悼施設建設構想などさまざまな意見がある。衆院選では、有力政治家たちの靖国をめぐる言動にも注目したい。