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ソマリア沖海賊 海自派遣へ新法の検討を急げ
読売新聞 11月27日 01:58
*http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=678813&media_id=20
読売は事態を何も分からずに書いています。
軍事常識がないから、こういう勇ましいことを書けるのです(記事全文は末尾)。
東アフリカ・ソマリア沖の海賊被害が拡大し、もはや看過できない段階になっている。日本も、海上自衛隊の艦船派遣の検討を急ぐべきだ。
やはり、海賊取り締まりを目的とする新法を制定し、警告射撃や船体射撃などでより柔軟な運用ができる体制を整備すべきだ。
もしも海賊を捕らえたとして、その裁判権はどこの国にあるのでしょうか。国際法は、日本の海上自衛隊が、海賊に乗っ取られた米国の船を攻撃し、ソマリア人の海賊を逮捕したような場合を想定していません。
武力行使で第三国の乗組員を傷つけた場合、責任はどうなるのでしょうか。
デンマーク海軍アブサロンが10人の海賊容疑者を捕らえたときのことを例に挙げます。乗っ取られたのはノルウェーのタンカーで、乗っていたのはロシア人士官とフィリピン人乗組員でした。逮捕した海賊は(収容能力の関係で)付近にいた米軍艦船に移されました。
(Aftenposten , September 9, 2008)
こういう場合、法的にどう処理されるのでしょうか。現在は何の規定もありません。各国の国内法にも、何の定めもありません。それはそうです。国際的権利関係が不分明なのに勝手に国内法を作ったら、国際紛争になりかねないからです。そこで現在は海賊を捕らえても、武器を没収したうえで海賊をソマリア海岸まで運び、釈放するしかないのです。
この海賊たちは6日間逮捕・拘留されたあと、ソマリアの沿岸で釈放されています。デンマークは国連決議に基づく哨戒活動に従事していましたが、デンマーク外務省と国防省の協議の結果、海賊容疑者の拘束に関する法的状況が明確でないと言う理由で釈放することになったのです。
デンマークのゲード国防相は、デンマーク議会に対して釈放を通告する際、国内法では海賊容疑者を国内法廷で裁く法的手続きが認められていない、と語り、公海においてソマリアの海賊を拘束した場合のとるべき措置について、CTF-150の参加国と共に、法的問題を解決し、国際法廷で海賊を裁けるよう、国連に要請していることを明らかにしています。
(POLITIKEN.DK, September 24, 2008)
こういった議論になるとすぐに憲法の話になりがちですが、憲法上は何の問題も抱えていない国でも、困惑しているのです。海上警備行動で対処できるなら、他国がとっくにそうしています。そういうことでは片付かない問題があるので、各国とも困惑しているのです。
じつは政府権力がからむとややこしくなるので、米国を中心に別の方策を採り始めている形跡があります。でもまだ信憑性がはっきりしません。うまくいけば海賊問題の解決につながり、またソマリア全体の安定と米国とソマリア・イスラム勢力の和解にもつながりそうなのですが。
読売新聞
ソマリア沖海賊 海自派遣へ新法の検討を急げ(11月27日付社説)東アフリカ・ソマリア沖の海賊被害が拡大し、もはや看過できない状態になっている。日本も、海上自衛隊の艦船派遣の検討を急ぐべきだ。
今年、ソマリア沖やアデン湾などで発生した海賊事件は94件で、昨年1年間の2倍を越している。日本関係の民間船舶も3隻が襲われた。
ソマリアが無政府状態で、取り締りが出来ないため、乗っ取った船や乗員の身代金を要求する「海賊ビジネス」が横行している。今年支払われた身代金総額は24億~29億円とも推定される。
アデン湾から紅海を経てスエズ運河を通行する船舶は年1万8000隻に上る。このうち日本関係の船舶は2000隻で、1割強を占める。毎日5隻以上が現場海域を通航している計算だ。
今後、いつ日本の船舶が重大な被害に遭ってもおかしくない。海賊対策は、貿易立国の日本の国益に直結する問題だ。真剣な取り組みが求められる。
国連安全保障理事会は今年6月と10月、ソマリア沖の海賊対策として各国に海軍や軍用機の派遣を求める決議を採択した。米英仏独露加など15か国が既に艦船を派遣し、船舶の警護や海賊の取り締まりに当たっている。
日本が何の海賊対策も講じず、他国任せにしておくことは許されない。政府と与野党は、海自の艦船を派遣するための方策を早急に検討すべきだ。
迅速な対応を優先するため、とりあえず調査名目で海自艦船を派遣し、日本船舶が襲われたら自衛隊法の海上警備行動を発令して対処する、という考え方もある。
だが、この場合、他国の艦船を警備することはできず、武器使用も正当防衛などに限られる。
やはり、海賊取り締まりを目的とする新法を制定し、警告射撃や船体射撃などでより柔軟な運用ができる体制を整備すべきだ。本来、政府が法案を提出すべき案件だが、スピードを重視し、議員立法で対応するのも一案だろう。
自民、民主、公明の超党派の中堅・若手議員らは新法の内容の検討を始めている。麻生首相も新法整備に前向きの考えを示す。
民主党は今、政府・与党と対決姿勢を強めている。しかし、海賊対策は国連海洋法条約や安保理決議を踏まえたもので、反対する理由はないはずだ。与野党協議に前向きに対応すべきだ。
臨時国会の会期が延長されれば、今国会中に新法を整備することも排除すべきではない。
↓【参考】
http://www.military.com/news/article/somali-pirates-call-on-american-benefactor.html