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反戦ビラ配布、有罪が確定へ
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この事件については判決を読まずに語る人が大半です。自分なりの判断は判決文を読んでから下したほうがいいですね。
では、有罪とされた行為ですが、具体的にどんな行為だったのでしょう。以下の文章の引用部分はすべて「判決文」のまま、何も変えていません。(*末尾注)
裁判所が認めた「事実」とはどういうものでしょうか。
まず、ビラが配られた場所がどんなところだったか。
>フェンスは設置されておらず,門扉の設備もない。
>敷地出入口部分は,敷地と外の公道が直結するような外観を呈している。
>一般の歩行者の中には,そのまま同宿舎敷地内を通り抜けていく者もいる。
というようなところですから、
>テント村のビラの他にも商業的宣伝ビラ等が数の多寡はともかく投函されている
こんな状態でした。ところが
>(宣伝ビラ)の投函者らも部外者でありながら同宿舎内に無断で立ち入ったという点では被告人らと同様であるにもかかわらず何ら刑事責任を問われることなく、
>被告人らのみが住居侵入罪を犯したとして
>強制捜査を受け,起訴されるに至っている。
というのが実態です。
しかしそうは言っても反戦ビラですから、読んだ自衛官の中には不快感を覚える人もいるかも知れません。自衛隊からの抗議を無視してビラをまき続けたのは、常識はずれではないでしょうか。
この点につき、裁判所の事実認定を確かめましょう。
ビラがまかれた各施設の管理者は個人名が特定されています。
陸上自衛隊東立川駐屯地業務隊厚生科長、
補佐は業務科長、
5号棟から8号棟及び同宿舎敷地の管理者は赤●●美さん、
補佐は厚生科長です。
ところでビラ配布に抗議したのは3号棟4階に居住していた航空自衛官の及●●実さんと、近所の高●●司さんです。上記4名とは別人で、いずれも管理者ではありません。したがって管理者としてではなく、個人的に注意ないしは抗議をしただけでした。
ビラ入れをした人がオフィシャルに注意を受けたことは、ただの一度もありませんでした。
及川さんの証言によれば、つぎのようなやりとりがありました。
>「いくら主義主張でもやってはいけないことはいけないんだ。」
>などと言い,掲示板に貼られた貼り札中
>「関孫者以外,地域内に立ち入ること」、
>「ビラ貼り・配り等の宣伝活動」
>とある箇所を指差して(ビラ入れをした)大洞に示した。
>同被告人は、「ああ、そうですか」と答えて立ち去った。
このように、ビラ配りの人は注意されるとすぐに立ち去っているのです。
近所の高橋さんの場合は少し長くなりますが、こうです。
(高橋さんは)
>「いいから通報するように言われているんだ。
>ここは自分達の生活している敷地内だ。(高橋さんは近所の人ですから、これは事実とちがいます。)
>勝手に入ってきてもらっては困る。
>勝手に入ってきてこんなことはしないでくれ。
>敷地入口にも1階にもその旨書いてあるだろ。
>不法侵入になる」と返答した。
>被告人大西(ビラいれした人)は、ビラを投函している際,空室と思われる居室の玄関ドア新聞受けに広告や宣伝のちらしが入っている様子を見かけたことから,(そのことを指摘した。)
>すると,高橋は,イラクヘの自衛隊派遣反対とか言ってるようなビラはだめなんだ,と応じ,ビラの回収を求めた。
>これに対し,同被告人が無言のまま階投を降りて立ち去ろうとしたところ,高橋は,同被告人の前に立ちふさがり,回収するよう再び強く求めた。
>同被告人は,まず,高橋の居室に投函したビラを回収し,
>さらに,同人の指示に従って隣室に投函したビラも回収した。
>それから,同被告人は5号棟東側階段を降りていったが,高橋もこれに付き添い,
>ビラのすべてをその都度指示して同被告人に回収させた.
素直に従っていますね。立ち去るだけではなく、ビラの回収にまで応じています。
これらの行動は2004年1月17日午前11時のことでした。その後、正式の抗議はおろか申し入れや問い合わせさえなく、警察から事情を聞かれるなどのこともありませんでした。ところが、1カ月以上もたった2月27日の早朝、いきなり3名が逮捕され、その後75日間も拘束されることになったのです。また、70日もの間「接見禁止」という処分が付けられ、弁護士以外の誰にも面会することができませんでした。
あとで裁判を通じてわかったところでは「被害届」というのは自衛官が届け出たものではなく、警察が求めて提出させたものでした。その方法は、すでに文面が完成しており、自衛官本人はそれに署名押印しただけでした。また、捜査は所轄の立川警察署ではなく警視庁公安部主導で行われるなど、すべてにおいて明らかに通常の事件と異なった取扱がなされています。
警視庁公安部というのはマンションの不法侵入を捜査するところなのでしょうか。そうではなく、治安問題を取り扱うところですよね。ビラの中身そのものが、治安問題とみなされたのです。しかしビラの内容を理由に逮捕できる法律がないから、住居不法侵入という理屈がこじつけられただけだけだと思います。
「この事件はビラ入れが問われたのではない」
「住居不法侵入が裁かれただけだ」
こういう意見がありますが、間違っていると思います。
しかしビラ入れ行為の違法性って、どれくらいのものなのでしょう。原審は次のように認めています。この認定部分は高裁でも最高裁でもくつがえっていません。
1)その頻度は毎月1回ずつと高くはなく,
2)ビラの投函にあたっては,多数の威力を背景にすることなく,
3)立ち入りは白昼に行われ,早朝や夜間に人目を盗んで立ち入ったことはなく,
4)その際も凶器や暴力を用いる,フェンスを乗り越えるなど手荒な手段を用いたり,・・・押し入ったわけではなく,
5)門扉の設備のない出入ロから普通に徒歩ないし自転車で入っている。
6)居住者その他宿舎関係者に面会を求めることも(なく)
7)チャイムを鳴らしたり声を出すなどしてコミュニケーションを図ることもせず,
8)外から玄関ドア新聞受けにビラを投函するのみでその場を立ち去っており,
9)投函されたビラも1戸当たり1枚ずつに過ぎない.
10)同宿舎敷地内に潜在するのは,せいぜいビラ投函に要する30分程度に過ぎず,それを超えて長時間居座ったことはなく,
11)その間,被告人ら構成員がことさらに目立つ言動を見せるなどして周囲の静謐を害したことは皆無である。
こういう行動でした。
しかし、これについて地裁は「無罪」と判断し、高裁と最高裁は「有罪」と判断したのです。
罰金なんと10万円ですよ! 75日間の留置所暮らしですよ! マンションに宅配ピザのチラシを投函したら10万円ですか? 「灯油の安売り」のチラシがブタ箱扱いですか? どうして同じ事をして、反戦ビラだけ罰金10万円なのですか?
よほど体制寄りの治安思想を抱いている人でない限り、これは間違った捜査であり、間違った判決だと考えるのではないでしょうか。
けれど、こういう判決を下す裁判官が現実に存在しています。メンバーは職場から懲戒処分に附されて生活に困りました。地域では警察の捜査に異論を唱えにくい空気ができています。しめつけられるような重苦しい社会がすぐそこまできています。
これは彼らが中核派と付き合っていたからそうなったので、警察だって社民党や共産党ならそこまでのことはしてこないとか、ただの市民団体なら大丈夫だろうとか、左翼運動に近づきさえしなければいいんじゃない、などというものではありません。
警察や自衛隊が気にくわないと思えばどんな無茶でもまかり通るような社会でいいのかどうか、そういう問題ですよね。
知らん振りしていると、いつの間にか市民生活さえも権力に監視、監理される社会の到来を許してしまうことになるのではないかと恐れます。
私は中核派ではないけれど、この問題に限っては、「彼らは無罪だ」という中核派が正しいと思います。いろいろと難しい関係があるとは思いますが、共産党や社民党、民主党はどうしてもっと抗議しないのか、とても残念です。
*注:最高裁の判断のもとになったのは、東京高裁の事実認定です。東京高裁は新たな事実調べをしていませんから、事実認定の部分は地裁と同じです。ちがったのは「事実」の「評価」だけでした。ですから判決のもとになる「事実」は地裁の認定がすべてです。ここでは地裁の判決文を引用しています。
■全体の流れ(時系列)
12月17日:立川署から自衛隊側に「現行犯逮捕の協力依頼」
12月18日~24日:「関係者以外立入禁止」の貼紙6枚を貼る。(1週間かけて6枚ですから、ずいぶん自衛隊は暢気です。)
12月19日:「不審者注意」の趣旨を口頭で伝える。
12月22日:被害届
12月24日:立川署による立川宿舎実況見分
12月26日:隊員に通報を求める「宿舎便り」
1月17日:ビラ入れ行動を注意される。
1月22日:立川署から派遣隊に「調整依頼」。(「被害届けの提出」「実況見分立会」「立川駅頭での情宣活動時に面割協力」)
1月23日:被害届。(ビラ入れを注意してから1週間後、警察の要請があって出されたんですね。ほんとにのんびりしています。)
2月22日:ビラ入れ行動 注意なし
2月27日:メンバー逮捕。
3月23日:被害届。