http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1315821407&owner_id=12631570
とてもよい資料を見つけたので紹介します。
「貧困」や「格差」の問題を追及した「内閣府経済社会総合研究所」の太田清レポート(2005)です。
フリーターの増加と労働所得格差の拡大
太田清
2005年5月
http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis140/e_dis140a.pdf
これは、政府におもねらない、実証的なすぐれた報告です。
■政府統計から漏れているものがある
格差を否定する論者はよく政府の「家計調査統計」などを利用します。しかし太田レポートはそれが誤りだときっぱり否定しています。
家計統計や賃金統計ではカバーされていない部分も多い。例えば、よく使われる賃金統計は、小規模企業や非正規労働者を含まない。もちろん、失業者やホームレスの増加に伴う実質的な格差の拡大もとらえていない。また、家計の統計も非正規雇用者の動向を把握できない。
だから、
統計とは別に、多くの人は実感として格差が拡大していると受け止めているのではないかとの指摘もある。
そこで、
これまでの実証研究と違って、非正規雇用等をもカバーする統計により、労働所得格差(賃金等の格差)の動向を最近年まで分析する。
その結果、
1990 年代後半から最近にかけて、個人間の労働所得格差が拡大していることがわかった。いずれの年齢層でも格差は拡大しているが、特に若年層でその拡大テンポが速い。この若年層内における格差の拡大は、フリーター化など非正規雇用の増大の影響が大きい。若年層の間での格差拡大は、日本社会の将来の姿を先取りしたものである可能性もある。
堂々たる結論ですね。
まことに正論であると思います。
■自己責任論は誤りである
しかし地道に働く道を捨てて、夢を求めてフリーターを選んだのは自分なんだから、困ったって自己責任だろうという声もあります。
太田レポートはこういう意見に対して、こう応えています。
まず、若年層が進んで、自発的にフリーターになっているのであれば、それを含めて所得の格差を測ってそれが拡大して見えるからといっても、その政策的な意味合いは大きくない。所得が少ないとしても、経済厚生上の問題があるのではないからである。
しかし、進んでフリーターになっているというよりも、やむを得ずになっており、正規雇用者になりたがっているとする証拠が多く見出されている。
つまり自己責任に帰一できる問題ではなくて、経済厚生上の問題があるのだと。
経済厚生というのは聞き慣れない用語ですが、要するに青年をしてそのような就業形態に赴かせ、そこから抜けられない現状にしたのは、社会経済政策じゃないかと言う意味だと思います。
小泉政権下で、内閣府からこのようなレポートを公表できるんだから、日本の役所というのもまんざら捨てたものではありませんね。
<関連日記>
恐るべきは「絶対的貧困」だ
衝撃の数字 貧困率15.7% 厚労省発表