元慰安婦の苦しみに寄り添った取り組みを望む

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元従軍慰安婦の証言を収集するプロジェクト実施、46人の生存者に協力依頼へ―中国
http://www.recordchina.co.jp/b13718-s0-c00.html

2007年12月14日、江蘇省南京市で「南京大虐殺史国際シンポジウム」が開催。席上、「中国慰安婦問題研究センター」主任で上海師範大学教授の蘇智良(スー・ジーリャン)氏は、生存している元慰安婦の証言を録画録音し収集する大規模なプロジェクトが来年から始動することを明らかにした。

中国の歴史研究では、日中戦争時には20万人もの中国人女性が慰安婦として日本軍に強制的に徴用されたといい、軍の指示に基づく、組織的な婦女暴行もあったとされる。

蘇教授によると、1990年代初頭には元慰安婦の生存者は100人以上を数えたが、高齢のため次々と亡くなり、現在健在なのは46人。旧日本軍の歴史的罪状を証明するには、一刻も早く被害者である彼女たちの大規模な証言収集が必要との関係者らの思いが今回のプロジェクトに結びついた。単に録音録画を収集するばかりではなく、法的な公証も同時に行われる予定という。

悪いことではない。このような取り組みは、おおいにやってほしい。しかし、同時に思ってしまう。今頃になって、なにをしてるんだか。と。

日本政府が「アジア女性基金」をつくった時に、どうして動かなかったんだろう。日本政府は「慰安婦」に対する国家責任を不十分ながら認め、総理大臣の謝罪の手紙と一緒に、わずか数百万円だけど償い金を渡すことを決めて、実施した。領事館まで出て来られない被害者には、被害者一人一人の自宅に領事がおもむいて手渡した。償い金を渡したことを政治宣伝の道具にしなかった。もらったことを秘密にしてほしいという要求にも誠実に応じた。

国家犯罪の後始末をするため、ここまでやった国なんてないよ。取り組みは、そりゃあ不十分なんだけど、人類史上はじめてのことだもの、手落ちもあれば足りない所もある。だけど、駄目な点ばかり批判しているのでなく、前進面は積極的に評価しないと、せっかくの取り組みがそこで足踏みしてしまう。げんに「アジア女性基金」は、足踏みどころか後退してしまった。

あの時、中国政府も中国社会も、まったく非協力的だった。あの時点で日中両国が共同で調査していれば、もっと被害者を発見できたろうし、証言も集められたろう。元慰安婦の生活だって改善できたし、治療も受けられたはずだ。

そうしておけば、慰安婦の強制の実態がもっと明るみになり、日本政府も右派政治家も言い逃れができなくなって、プロジェクトがもっと本格化し、継続されていただろう。あの時なら予算もついたのだ。だがプロジェクトは主に中韓両国の非協力のせいで、未完のまま終了せざるを得なかった。

協力しない、償い金は受け取らない、しかも自分たちでは調査をしない、そういう態度だったくせに、今になって何なんだろう。遅蒔きながら調査の腰をあげたという点では良いことだし、決してそこを非難するつもりはないのだが、それにしても、なんで今ごろなのか。

中国政府が非協力的だった理由は知らない。ただこうは言える。政府というやつは、けっして民衆の味方ではない。中国政府も、日本政府も、その点では同じ事だ。

このニュースで思うこと。

中国政府の態度は不可解だが、中国政府や中国の御用学者の振るまいと、元慰安婦のおばあさんを混同してはいけない。政府の態度がどうであれ、彼女たちは被害者だったのだ。従軍慰安婦制度は全ての女性に対する犯罪だった。中国政府の態度は理不尽だけど、それをもってこの問題をあいまいにする理由にしてはならない。

でも、こうは考えない人が多いかもなあ。

■「日本政府は何度も謝罪している(させられている)」という主張について

そういう事実はないように思うのですが、いかがでしょう。

2000年8月17日:山崎隆一郎外務報道官
これは謝罪ではなく、「謝罪しているじゃないか」という反論です。

2000年8月30日:河野洋平外務大臣
2001年4月3日:福田康夫内閣官房長官
2002年9月17日:小泉純一郎首相
2005年4月22日:小泉純一郎首相
これらは謝罪ではなく、「すでに謝罪している」という説明です。

2001年9月8日:田中眞紀子外務大臣。
これは直接的には中韓に対するものではなく、連合国全体に対するメッセージです。

2001年:小泉純一郎首相
これは私が日記で評価している「アジア女性基金」の謝罪文です。
首相が代わるたびに、首相名だけを入れ替えて使われています。
でも小泉さんの時に終結してしまいました。

2003年8月15:小泉純一郎首相
2005年8月15日:小泉純一郎首相
2001年10月15:小泉純一郎首相
これは謝罪の意を表明するという終戦記念日のメッセージと、直接的謝罪です。しかしこの発言の裏には、日本国内で閣僚から小泉さんの言葉を踏みにじるような発言が続いたので、小泉さんは何度も同じ事をくりかえすことで自分の発言がウソではないと念押ししなければならなかったんですよね。

結局のところ、自発的な謝罪といえるものはほとんどありません。失言のあと始末とか、木で鼻をくくったような説明とか。しかし公的にこう言わざるを得ないのは、謝罪せざるを得ない事実があるからです。それを認めないという閣僚の発言がいつまでもなくならないから、何度でも蒸し返されるのです。

■「強制連行の証拠はない。河野談話が勝手に強制連行を認めた」という主張について

河野談話は冒頭でつぎのように言います。

いわゆる従軍慰安婦問題については、政府は、一昨年12月より、調査を進めて来たが、今般その結果がまとまったので発表することとした。

政府はそれまで、慰安婦関係資料はすでに存在しない旨の認識を、繰り返し表明していました。また「強制連行」どころか、官権の関与自体がないとの認識でした。しかし民間研究者が慰安婦関係公文書を発見したのをきっかけに、政府の指示で史料探しが行われました。その結果、多数の慰安婦関係資料が発見されたのです。その中には官権の関与を示す史料もありました。ですから、史料発見前の政府見解と史料発見後の河野見解が異なっていても、それは当然のことです。

つぎに反論の後半、河野談話は「強制連行」を認めたのでしょうか。実際にどんなことを言っているのかを見てみます。

  • 長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。
  • 慰安所は、当時の軍当局の要請により設営された
  • 慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。
  • 慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たった。
  • 甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くある。
  • 官憲等が直接これに加担したこともあった。
  • 慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。
  • 戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていた。
  • 当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあった。
  • 募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。
  • 本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。

私はここに指摘されていることの多くは公文書に裏づけられており、事実と見なし得る充分な根拠があると思います。

慰安婦関係調査結果発表に関する
河野内閣官房長官談話
平成5年8月4日

いわゆる従軍慰安婦問題については、政府は、一昨年12月より、調査を進めて来たが、今般その結果がまとまったので発表することとした。
今次調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。
慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。
慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。
また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。
なお、戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。
いずれにしても、本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。
政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。
また、そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える。
われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。
なお、本問題については、本邦において訴訟が提起されており、また、国際的にも関心が寄せられており、政府としても、今後とも、民間の研究を含め、十分に関心を払って参りたい。

■「強制的募集を命令した文書はない」という主張について

「強制的募集を命令した文書はない」のは、当然のことです。だまして連れていったり、身売り契約で連れて行ったり、もちろん暴力的に連れて行ったりすれば、刑法第226条の国外移送罪に該当します。またその事情を知っていて女性を受け入れた側も、刑法第227条の被拐取者収受罪に問われるおそれがあります。ですから違法行為を命令する文書など、公的機関がつくるはずがないのです。

違法行為は命令ではなく、黙認の形で行われたのです。中には営業免許もない者に軍が慰安婦募集を許可してしまっていて、警察が仕方なくこれを見逃したケースさえあります。

慰安婦募集は非人道的で当時の社会通念からも著しくかけはなれたものでした。当時の日本国内の警察はどういう反応を示したでしょうか。山形県、茨城件、群馬県、和歌山県、兵庫県、福岡県ほかの警察資料が公開されています。

  • このようなことは軍部の方針としては、にわかに信じられない。
  • こんなことを公然とされては銃後の一般民衆、とりわけ出征兵士を送り出した家庭はどう考えるだろうか、
  • 更に一般婦女子の身売りを防止しようという精神にも背くものである。

如斯ハ軍部ノ方針トシテハ俄ニ信ジ難キノミナラズ、斯ル事案ガ公然流布セラルゝニ於テハ、銃後ノ一般民心殊ニ応召家庭ヲ守ル婦女子ノ精神上ニ及ボス悪影響少カラズ。更ニ一般婦女身売防止ノ精神ニモ反スルモノ
本件果タシテ軍ノ依頼アリタルモノカ全ク不明ニシテ、且ツ酌婦ノ稼業タル所詮ハ醜業ヲ目的トスルハ明ラカニシテ、公序良俗ニ反スルガ如キ本件事案ヲ公々然ト吹聴募集スルガ如キハ皇軍ノ威信ヲ失墜スルコト甚シキモノアリト認メ、厳重取締方所轄湊警察署長ニ対シ指揮致置候

特に高知県は厳しい考えを打ち出しています。

高知県警察が県下警察に指示した取締方針。

支那各地ニ於ケル治安ノ恢復ト共ニ同地ニ於ケル企業者簇出シ、之ニ伴ヒ芸妓給仕婦等ノ進出亦夥シク、中ニハ軍当局ト連絡アルカ如キ言辞ヲ弄シ、之等渡航婦女子ノ募集ヲ為スモノ等、漸増ノ傾向ニ有之候処、軍ノ威信ニ関スル言辞ヲ弄スル募集者ニ就テハ絶対之ヲ禁止シ、又醜業ニ従事スルノ目的ヲ以テ渡航セントスルモノニ対シテハ身許証明書ヲ発給セザルコトニ取扱相成度
(史料4 高知県知事発内務大臣宛「支那渡航婦女募集取締ニ関スル件」1938年1月25日付)

……中には軍当局と連絡があるかのようなことを言って中国行きの女性を募集する者が増えている。軍の威信にかかわるようなことを言う業者は絶対にこれを禁止する。売春目的で渡航しようとする者には、身元証明書を発行しない。

このように、警察も本来ならば厳しく取り締まりたかったのです。慰安婦募集は、それほどひどい行いだったのです。

「強制的募集を命令した文書はない」のは、当然のことです。だまして連れていったり、身売り契約で連れて行ったり、もちろん暴力的に連れて行ったりすれば、刑法第226条の国外移送罪に該当します。またその事情を知っていて女性を受け入れた側も、刑法第227条の被拐取者収受罪に問われるおそれがあります。ですから違法行為を命令する文書など、公的機関がつくるはずがないのです。違法行為は命令ではなく、黙認の形で行われたのです。中には営業免許もない者に軍が慰安婦募集を許可してしまっていて、警察が仕方なくこれを見逃したケースさえあります。

「醜業婦渡支ニ関スル経緯」
一、十二月二十六日内務省警務課長ヨリ兵庫県警察部長宛『上海徳久■■■、神戸市中野■■■ノ両名ハ上海総領事館警察署長ノ証明書及山下内務大臣秘書官ノ紹介名刺ヲ持参シ出頭スル筈ニ付、事情聴取ノ上何分ノ便宜ヲ御取計相成度』トノ電報アリ
一、同月二十七日右両名出頭セルガ内務大臣秘書官ノ名刺ヲ提出シ徳久ハ自身ノ名刺ヲ提出セズ且身分ヲモ明ニセズ。中野ハ神戸市福原町四五八中野□□ナル名刺ヲ出シタルガ、同人ノ職業ハ貸座敷業ナリ
一、同両人ノ申立ニ依レバ、大阪旅団勤務ノ沖中佐ト永田大尉トガ引率シ行クト称シ、最少限五百名ノ醜業婦ヲ募集セントスルモノナルガ周旋業ノ許可ナク、且年末年始ノ休暇中ナルガ枉ゲテ渡支ノ手続ヲセラレ度キ旨ノ申述アリ
一、兵庫県ニ於テハ一般渡支者ト同様身分証明書ヲ所轄警察署ヨリ発給スルコトヽセリ
一、神戸ヨリ乗船渡支シタルモノナキモ陸路長崎ニ赴キタルモノ二百名アル見込ミ
一、一月八日神戸発臨時船丹後丸ニテ渡支スル四、五十名中ニ湊川警察署ニ於テ身分証明書ヲ発給シタルモノ二十名アリ
一、周旋業ノ営業許可ナキ点ハ兵庫県ニ於テハ黙認ノ状態ニアリ

違法行為や強制がなかったのではなく、国家機関はそういうことをしないタテマエになっているので、事実がなかったかのように書類上の帳尻を合わせているだけなのです。軍の要請だから、違法行為として摘発できなかっただけなのです。

もしも軍の関与がなければ業者がどんな扱いをされるのか、その実例があります。第一次上海事変の時、売春に従事することを申告しないで長崎から15人の日本人女性を上海へ送った事件がありました。これは「海軍指定慰安所」の経営者でしたが、国外移送誘拐罪で有罪の確定判決を受けているのです。

時局利用婦女誘拐被疑事件ニ関スル件[和歌山県知事](昭和13・2・7)
(外務省レファレンス参照)

■「泥さん、あなたは中国のスパイか?」という誹謗について

だれかに「あなたはドロボーですか?」といきなり問いかけるのは失礼ですよね。「あなたは中国のスパイですか?」と問いを投げかけるのも、とても失礼なことだと思うのですよ。言われた方は傷つきますよ。そういう問いかけが「皮肉」程度のことであるとお考えならば、それは大きな考え違いというものです。そう問いかける以上は、それなりの根拠を示していただきたいと言う私の言い分は、特に間違っていないと思いますが、いかがでしょう。