海賊が株式会社に?

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1430059936&owner_id=12631570

ソマリアの海賊、株式取引所まがいの組織を設置
Reuters 2009/12/1
http://www.reuters.com/article/idUSTRE5B01Z920091201

ソマリアの海賊が「株式会社化」しているという報道です。一口にソマリアの海賊といっても、かなり多くの組織に分かれていて、それらが合同して株式取引所のようなものをつくったといいます。

広く資金を集める目的は、一般的にいってふたつほどあります。ひとつは事業規模を大きくするための資金集め。もうひとつはリスクの分散です。ソマリア海賊の目的はどちらでしょう。海賊の市場は限られているので、いまさら大規模な投資は無意味です。ならばリスクの分散が目的であろうと推測するのが妥当でしょう。

海賊でも企業経営でも、自己資金でできるなら、そうしたほうがよほど儲かります。そうできなくなり、外部の資金が必要になったということは、それだけ海賊の経費が増えたことを示しています。

海賊の経費は戦力の維持費です。海賊が優秀で命知らずの若者をリクルートするには、作戦が成功して身代金を得るまで、配下に給料を支払い、メシを食わせ、いろいろと便宜を図らねばなりません。武器や燃料をそろえる必要もあります。毎月一回必ず成功するなら、これくらいの経費は屁でもないことでしょうが、1年間も兵隊にタダ飯を食わせていては、海賊オーナーが破産するでしょう。そこで広く資金を募って、リスクを分散させることにしたのです。維持費が増したのは、海運会社が海賊ノウハウを得て対策を強化したので、成功率が下がったことを示しています。

国際海事局の紹介している海賊対策成功例は面白いです。

  • 船のスピードを上げてジグザグに進み、波を蹴立てる(これだけで、小さなボートにすぎない海賊船は近づけないそうです。)
  • 犬の鳴き声をスピーカーで流す(イスラム世界では犬は汚れた動物だそうで、海賊は近寄らなかったそうです)。
  • 舷側に電流式有刺鉄線を張り巡らせる。
  • はしごを甲板に上げておく

まるでマンガみたいな話ですが、本当のことです。

しかし今後は海賊の動機が個人的な欲得から、不特定多数の資金提供者の投資利得へと変化します。もっと海賊をしろという社会的圧力が強まるのです。成功率の高い海賊組織には豊富な資金が集まるので、各組織はこれまで以上に成功率を上げようとするでしょう。 とりもなおさず、それは凶暴化を意味します。

「利害関係者が増え、リスクが増大していることから、最近数カ月間に、身代金の相場が200~300万米ドルから400万米ドルの間にまで高騰してきている」と記事にあります。こうなると狩られる方も大変です。ソマリア海賊は乗員に手を出さないから、変に抵抗するより保険金で身代金を支払った方がまし、というのがこれまでの考え方だったようですが、保険会社の意向もあって、今後はかなりの抵抗が予想されます。

牧歌的神話時代から、夢も何もないビジネス時代への突入。自衛隊、大丈夫でしょうか。

以下は海洋政策研究財団が翻訳した記事の要約です。

「ソマリアの海賊、株式取引所まがいの組織を設置」

(1)ソマリアの海賊は、彼らの主要拠点の1つ、ハーラーデーレ(首都、モガディシュ北方400キロ)に、ハイジャック資金を集めるための組織を設置している。この組織は、ソマリアの土地を追われた人や外国からの資本家を引き寄せ、人や資金の投資を管理するための犯罪組織のための一種の株式取引所まがいのものである。

(2)元海賊の1人は、「我々は、4カ月前のモンスーンの季節に、この株式取引所を設置することを決めた。15の『海運会社』(maritime companies)でスタートし、現在は72社が参加している。これまでに、その内、10社がハイジャックに成功している」と語っている。さらに、この元海賊は、「取引所は皆に開かれていて、誰でも、海上で個人的に、あるいは陸上で現金、武器や便利な資材を提供することによっても参加できる。我々は、海賊行為を共同体活動に変えた」と述べた。

(3)取引所は街の中心で1日24時間開かれており、そこには投資家以外にも、しばしば妻や母親が海賊行為で行方不明になった男性親族に関する情報を求めて現れる。元海賊によれば、海賊は毎週のように人員や装備を失っているが、海賊行為が減らないのは儲かるビジネスだからである。元海賊によれば、利害関係者が増え、リスクが増大していることから、最近数カ月間に、身代金の相場が200~300万米ドルから400万米ドルの間にまで高騰してきているという。ある22歳の離婚女性は、元夫から慰謝料として手に入れた、ロケット推進擲弾筒を現物投資した。彼女は、「私は幸運だった。『会社』に参加してわずか38日間で、7万5,000米ドルを稼いだ」と語った。