http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1900929387&owner_id=12631570
以下の記述は、「日本共産党」コミュの議論で問われたことに答えるものです。
長くなるので、テーマごとに区切って書きます。
■保護者に対して助成金が二重支給されているのでは?
外国人学校(高校課程)の保護者に対する助成は、国による「高等学校等就学支援金制度」しかありません。二重受給できる制度がないんです。
例として大阪府の制度を見てみましょう。大阪府の私立高校等の保護者は、「就学支援金(国制度)」と「授業料支援補助金(府制度)」の両方を受給できます。
「授業料支援補助金(府制度)」の支援条件は、「私立高校生等就学支援推進校」として指定された大阪府内の私立高校等に10月1日時点に在学していること、とあります。
<支援対象となる生徒等に必要な要件>大阪府HP
http://www.pref.osaka.jp/shigaku/shigakumushouka/shigakumusyouka_23.html#youken
では「私立高校生等就学支援推進校」のリストを見てください。外国人学校は入っていますか?
1校も入っていません。
<大阪府知事が指定した私立高校生等就学支援推進校一覧>大阪府HP
http://www.pref.osaka.jp/shigaku/shigakumushouka/suishinkou_koukou_23.html
■公立高校と私立高校と外国人学校の補助金の格差は?
平成24年度の文科省予算の表を見てください。リンク先の「教育財政」4ページです。
*http://www.kyoi-ren.gr.jp/datashu2012.pdf
一見して分かるとおり、国公立学校と私立学校との格差は明らかです。そして外国人学校への助成は、予算項目にありません。ゼロです。
さて、私立学校に対する助成金には、地方自治体によるものもあります。東京都は平成23年度、教育予算総額は9299億円。このうち、私学助成金は1668億円でした。残りが公立学校予算だから、7631億円。私学助成は公立予算の約5分の1。大きな格差ですね。
外国人学校への補助金はさらにお粗末で、全部合わせて3400万円しかありません。平成19年は9300万円だったので、朝鮮学校に対する助成金が減ったのでしょう。
<東京都一般会計決算と教育関係決算の推移>東京都HP
*http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/shigaku/shigakugyousei/pdf/2013part4.pdf
以前、東京の私立学校1校当たりの助成金を紹介しましたが、小学校で1校当たり1億2千万円、中学校で1億5千万円、高校で2億7千万円でした。
<東京都生活文化局>東京都HP
*http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/shigaku/jyosei/keijyouhi.htm
幼稚園から高校まで、外国人学校を全部合わせても、私立小学校1校分の3分の1、私立高校1校の8分の1程度しかないのです。
私の住む兵庫県では私立小学校(10校)助成が11億円、私立中学校(35校)で39億6千万円、私立高校(52校)で122億千万円。1校当たり小中学校で1億円あまり、高校で2億円あまりです。
<平成25年度私学助成等予算案の主なもの>兵庫県HP
*http://web.pref.hyogo.lg.jp/pa15/documents/h25yosan.pdf
最低でもこれだけの直接助成があります。国から事業別の補助金がかなりあるので、総額はもっと多くなります。20校(数え方で32校)ある外国人学校予算は、全部合わせて3億1千万円。平均1500万円です。比較になりませんね。
他の自治体も似たようなものです。京都の場合外国人学校だけの資料はありませんが、外国人学校を含む各種学校への補助金は、1校当たり95万円。大阪では外国人学校を全部合わせて2億円足らず(1人当たりなら77,000円)。府下にあるのは18校(数え方で22校)なので、平均3300万円です。
<専修学校各種学校都道府県別助成状況(近畿)>全国専修学校各種学校連絡会HP
http://www.zensenkaku.gr.jp/josei_h17/condition_list05.html
■どうして朝鮮学校保護者にだけ助成しているのか?
他の外国人学校の保護者にも助成している自治体が大半だから、朝鮮学校保護者に「だけ」というのは間違いです。
しかし朝鮮学校保護者にだけ助成している自治体があるのは事実です。その理由には、ふたつあります。ひとつは歴史経緯。もうひとつは学校の実態です。
まず歴史経緯から。
これまで述べたとおりの格差に対応するために、外国人学校保護者に対する助成金がつくられました。なぜそんな形式にしたのか、古いことなので分かりませんが、最初にそのような形式にした自治体は、地方自治体から教育機関を直接援助する法的根拠がなかったためではないかと推測します。昭和51年に私立学校振興助成法が作られるまで、予算を支出する根拠が薄かったのです。
その方式を参考にした自治体は、同じような保護者助成方式をつくりました。その方式をもとにさらに研究した自治体は、どうにか法的根拠を見いだして学校を直接支援する条令を作りました。
当時の条令が改められずに、そのまま来ているわけです。その当時は外国人学校といえば朝鮮学校と華人学校でした。そこで朝鮮学校と華人学校保護者に限定した助成条令がつくられたのでしょうが、これは時代に合わせて適宜改めるべきだと思います。
つぎに学校の実態。
外国人学校といっても、様々です。経営主体に法人格がない、校舎がない、校庭がない、校舎があっても自己所有でない、など各種学校としての認定基準をクリアしていない所も多いのです。住民訴訟を起こされている学校もあります。公金を使うのだから、外国人学校なら何でも助成にするというわけにはいかない事情もあるのでしょうね。
いずれにせよあくまで補助制度であり、金額も格差を是正できるほどのものではありません。こんなものを優遇措置といえるはずがありません。
■朝鮮学校は反日教育をしているのか?
以下はすべて引用です。私は筆者の見解に同意します
朝鮮学校「無償化」除外問題Q&A(金明秀/計量社会学)より引用
https://synodos.jp/faq/1965/5「朝鮮学校は反日教育をしている」というイメージは、一部の人たちにたいへん根強くあるようです。しかし、それは事実に反しています。
1993年に在日韓国人青年(18~30歳)を対象に実施された全国調査の中から、それぞれの国にどれぐらい愛着を感じるかという設問への回答を平均値で示したのが下の図です(標本サイズ800名、回収率46.4%。詳細は福岡安則・金明秀『在日韓国人青年の生活と意識』東京大学出版会を参照)。「1まったく感じない」~「5非常に感じる」までの5点尺度ですので、得点が高いほど愛着が強いことを意味します。
一見して明らかなように、朝鮮学校経験者とそれ以外の間に、日本に対する愛着の強さに有意な差はみられませんでした。どちらも非常に高い水準で「日本」や「生まれ育った地域」に愛着を持っていることがわかります。
加えて、両者とも、祖国・母国たる「北朝鮮」「韓国」より、「生まれ育った地域」「日本」のほうに強い愛着を示しています。「朝鮮学校は反日教育をしている」という実態があれば、このようなデータにはならないでしょう。
朝鮮学校無償化除外が問題となって以降、東京、神奈川、埼玉、大阪と、抜き打ちのように朝鮮学校に視察が入りました。しかし、一度として「反日教育」なるものが発見されたことはありません。
むしろこの図は、朝鮮学校が出自に関連する3国すべてに健全な愛着を育むような教育に成功していることを示唆しています。日本学校などに通った在日は「在日」「韓国」「北朝鮮」といったエスニックな帰属対象への愛着を低下させているのに対して、朝鮮学校出身者はバランスよく愛着を内面化しています。
■なぜ民族教育を行う必要があるのか? 日本の公立学校に通えばいいのでは?
以下はすべて引用です。私は筆者の見解に同意します
朝鮮学校「無償化」除外問題Q&A(金明秀/計量社会学)より引用
https://synodos.jp/faq/1965/5自覚している人はそう多くありませんが、日本人も学校で民族教育を受けています。民族教育とは自分が所属している民族集団の言語や歴史、文化を学ぶことです。日本語、日本史、日本の音楽や芸術、武道は、いずれも民族教育そのものなのです。
現代社会においては、自民族に対して健全なプライドと愛着を感じることは人格形成において重要なことだと思われていますので、日本人が日本の学校で民族教育を受けること自体には何の問題もありません。問題なのは、日本の教育制度が、日本人以外の民族集団にとっての民族教育をいっさい認めていないということです。
その結果、日本の学校で教育を受ける民族的マイノリティは、相対的に、健全な人格形成を阻害される危険性があります。
民族学校経験者は、日本学校にしか通わなかった在日に比べて、自尊心に傷を受けずにすむ傾向があるということがわかります(p<.05)。
また、双方とも「過去」に比べて「現在」では自尊心を回復していますが、日本学校にしか通わなかった在日の「現在」の値は、民族学校に通った在日の「過去」の値よりも高くなっています。平均的にいって、日本学校に通うことで形成を阻害された自尊心は、時間をかけても民族学校に通うことで涵養されたはずの自尊心まで回復することは難しいということです。
同種の問題はブラジル人学校など幅広い民族集団で観察されています。民族的マイノリティが健全に人格を形成するうえで、民族教育がいかに重要であるかがわかります。
視点を世界に向けてみると、例えばアメリカの日系移民は、戦後を起点にしても四世、五世という世代になっていますが、民族教育の努力は1980年代後半以降になってますます盛んになっています。
日系移民がそうやって継承した日本文化がアメリカ社会に果たした文化的、社会的貢献も小さくはありません。空手や合気道といった武道をスポーツとして定着させましたし、各地の日系コミュニティで行われている盆踊り会場では、浴衣を着ての踊りだけでなく、生け花、書道、折り紙などが実演されるなど、貴重な文化交流の場となっています。
移民の子孫は「国家と国家の懸け橋」にたとえられることがありますが、朝鮮学校出身者は日韓朝3か国の懸け橋になれる可能性を持った貴重な人材です。「反日教育をしている」といった根拠のない偏見によってその価値を否定するのは、とても残念なことです。