日本VS日本

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マイミクさんが変なメールをもらったそうで怒ってはります。

「第二次世界大戦でアジア諸国は日本に感謝している」てなことをメーリングリストに書き込んだ人がおられて、そのことでやり取りしてたらキレたメールを寄越されたそうです。

「大戦前に69だった独立国は、いま、191国にふえていますが、日本が提唱した民族解放が起爆剤になったといえましょう」という加瀬俊一の引用付で。

ちなみに日本に感謝している国というのは「インド、インドネシア、マレーシア、シンガポール、パラオ、台湾、チベット、サウスモンゴル」だそうです。

ふうん。

日本には面白いことに、つぎのような歴史認識をもった人がいるようです。

第二次世界大戦でアジア諸国は日本に感謝しています。
日本が民族解放を提唱したことを忘れていないからです。
日本は日本の提唱した民族解放に頑強に抵抗して反日的植民地支配を続けていましたが、日本軍の勇敢な戦いが起爆剤になってこれらの地域は日本の支配から脱したのです。

日本の戦いによって独立した地域には日本の植民地であった台湾、韓国、朝鮮民主主義人民共和国があり、日本が軍事占領して入植地をつくり植民者を送っていたサウスモンゴルがあり、日本が信託統治していたカロリン、マーシャル、ベラウ、ミクロネシアが含まれております。

ところで日本が民族解放のために戦っているそのとき、日本は許し難いことにこれをあざ笑うがごとくに『大東亜政略指導大綱』をつくり、「マライ」「スマトラ」「ジャワ」「ボルネオ」「セレベス」を重要資源確保のため自国領土すると決定しています。なんと許し難い反日・侮日政策ではありませんか。これらの地域が日本軍敗北のあとで独立したのは、まことに日本軍の戦いのおかげであります。

ところで大戦前にはニューギニア、サモアをドイツが統治しておりました。日本は民族解放を掲げる日本の願いを踏みにじるかのようにドイツと同盟し、これら地域の独立を妨害したのです。まことに民族独立という日本の悲願の前に立ちふさがる欧米帝国主義の手先、アジアの裏切り者、それこそが日本でありました。

このようにアジアには日本という植民地強国があったのですが、日本の戦いにより日本は敗北し、すべての植民地が解放されたのです。
よかった、よかった。

日本が戦った理由はアジアを解放するためではありません。そのことは「帝国国策要綱」にそんな目標が書いてないのを見てもわかります。そこに日本は資源を求めて南方に出ていくと書いてあります。本文に示した史料には、占領地の住民に独立の期待を与えるなと書いています。日本領土にすると決めた地域もあります。独立を約束したフィリピンは米国が初めから独立に同意していました。つまり日本軍は解放軍ではなかったのです。

日本は支配するために、アジア諸国民は独立のために、支配者を追い出す必要がありました。日本とアジア諸国民の共通の敵は西欧列強でした。そこでそれぞれの利害に基づいて手を組みました。

日本が負けた後、アジア諸国民は、帰ってきた宗守国の侵略軍を相手に、日本軍に支給された武器や日本軍から奪った武器で戦いました。しかし日本が負けていなければ、彼らは日本軍を相手に独立戦争を戦ったでしょう。

日本が戦争したから西欧支配が弱まり、結果的に独立が早まったのは事実です。しかしそれが日本の意図した結果ではありません。日本の意図はその地域を支配することだったからです。

しかし戦後になって日本の保守層はその意図を隠し、解放者であったかのように唱えました。一部のアジア指導者は援助の見返りに日本側の言い分を受け入れました。日本軍の指導を受けた武力勢力の一部には、文化として日本軍の軍歌を受け入れて今も歌っている所もあります。けれどそのことが日本軍が解放軍であった証明にはなりません。大日本帝国の公文書がそれを否定しているからです。

日本の本音と建前、戦中の実態と戦後の評価の矛盾を理解していただけたでしょうか。

敗戦後にインドネシア義勇軍に入って戦った日本兵を私は尊敬してます。彼らこそが英雄の名誉を授けられるべきだと思っています。でも彼らは戦死者として靖国に合祀されていません。その戦いは遺族年金の対象にもされていません(法的に難しいのは理解できますが)。

本当にアジア解放のために戦ったのは「個人」なんです。けっして「日本」ではありません。日本がプロパガンダとして打ち出したアジア解放は、理念としては正しいのです。けれど大日本帝国にはそんな気持ちはさらさらなく、ちょうど英国がアラブにした約束みたいな空手形でしかありませんでした。個人として戦った人たちは国にだまされて立派な戦いをしたんです。国が自分の二枚舌を反省しないで彼らを誇るのは間違いだし、誇る資格なんかありません。

そういう歴史を踏まえた上で、日本に対する先方の感謝の言葉をありがたく受けとるのは構いません。そうではなく、ここで私が指摘したような矛盾にまったく無自覚なまま、日本軍がアジアを解放したという虚偽を歴史事実として普及したいと考えている人がいるのが問題なのです。

こういう人に対しては、私はそりゃ認識不足だよと言うしかありません。