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管制担当者、護衛艦側に舵を取るよう伝達
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今回の事故の原点は危険な追い越しをかけた韓国船にあります。
しかし海上保安庁の「情報提供」が不適切だったのではないかとの指摘も現れています。すると、またまたニュースでは「反日」だの「売国」だのというトンチンカンな意見がかまびすしく語られています。そこで、この点につき確認したいと思います。
■「あくまで情報提供であり、指示ではなかった」(海上保安庁)とはどういう意味か
情報提供とは、法律上の用語は「勧告」です。
勧告は行政指導にあたるので強制力はありませんが、勧告に従わないで事故を起こすと重い処分が下されますから、強制力に近い効果を持っているようです。なので単なる情報提供であると言うのは不適切だと思います。
海上保安庁に勧告の権限を与える法案審議のときにはつぎの通り説明されていました。
第171回国会 国土交通委員会
○政府参考人(岩崎貞二君)
勧告を出していたにもかかわらず実際に事故を起こしてしまったということになりますと、事故を起こすと一般的に私どもの捜査の手続も取りますし、それから海難審判という手続も始まります。そうした中で、勧告を出したのにそれに従わなくて不適切なことをやれば、それは通常の事故を起こしたときよりもやっぱりより重いものが出るんだろうと、こんなふうに思っております。
そういうこともあり得るんだということを含めて周知等をして、ちゃんとこの勧告に従いながら、よくきっちりした操船をしてもらいたいと、このように思っているところでございます。
■「勧告」制度がつくられた理由
勧告制度が設けられたのは、海上保安庁の指導に従わない外国船が多いからでした。今回の事故は韓国船長が勧告に従ったから起きたという一面もあります(主因はあくまでも危険な追い越しを試みた韓国船にあります)。勧告に従って事故になったら「あくまで情報提供」と言い始めるのはフェアではないと思います。
第171回国会 国土交通委員会
○政府参考人(岩崎貞二君)
外国の船舶というのは、いわゆる本当の意味での弱い緩やかな行政指導については、これはなかなか聞いてくれないというのはこの場面も含めていろいろあります。ですから、今回はこれは法律に基づく勧告だということで、まあ今までよりはワンステップアップしたのかなと思っておりますし、これは法律に基づく勧告を出しますというふうなことを、いろんなこれから周知活動をやっていきますけれども、そうしたことも必要があればきっちり伝えていきたいと思っております。
■指示と勧告の違い
指示には強制力がありますが、勧告には強制力がありません。しかしそれでは勧告の効果がないので、船舶が従うように運用の工夫で「いわゆる勧告ではないようにしていく」と述べています。
第171回国会 国土交通委員会
○植松恵美子君(民主党)
事故があってからでは取り返しが付かないことですので、場合によっては勧告よりももっと強い義務の履行を求める指示として伝えたらいかがかなと思うんですけれども、今回勧告にして指示にしなかったような理由があれば教えていただきたいと思います。○政府参考人(岩崎貞二君)
この法案を提案させていただくときに、ここの部分どういう言葉にしようかというのを我々も内部で勉強いたしました。
航空の管制は、これは指示という言葉を使っておりましてきっちりしております。海の場合は、先生も御覧いただいたとおり、海上交通センターの基本的にレーダーの画面を見ながら我々船に対して注意喚起をやっているわけでございますけれども、船の、海の上のレーダーというのはなかなか波とか小型の船が見分けにくいとか、大きな船の陰に隠れて小型船が映らないとか、そういういろいろレーダー画面で欠点がございます。すべての状況を私どもの海上交通センターの方からきっちり把握しているわけではございません。
例えば、本当は、レーダー画面から見ると左に行くのがいいのかなと思っていても、左に実は我々のレーダー画面では映っていない小型の漁船がいてそっちに移れないかもしれないということなので、余り強いことを我々がするのは不適切かなということで、ただ、今までの行政指導ベースではこれはまたいけないということで、悩んでいた末、この勧告という言葉にさせていただきました。
ただし、単に勧告するだけではなくて、勧告した後どうしたのかという報告を求めるというようなことも含めて、少し、単なるいわゆる勧告ではないようにしていくということで、工夫はさせていただいているところでございます。
■海上保安庁に事故責任はあるか(その1)
海上保安庁が韓国船の追い越しのために貨物船に対して航路を右に譲るように勧告していたと報道されています。
これは変な勧告です。はっきり言って違法な勧告ではないかと思います。港則法施行規則に反しているからです。
港則法施行規則(第二十七条の二 第一項)には、関門海峡で追い越しができるのは、つぎ場合だと定めてあります。
「当該他の船舶が自船を安全に通過させるための動作をとることを必要としないとき。」
他の船が航路をゆずらなくてもいいときだけ、追い越しができるとあるのです。他の船に航路を開けさせ、追い越すように勧告した海保の行為は、これに違反しています。どうも海保の責任は免れないように思います。
港則法施行規則
(特定航法)
第二十七条の二 船舶は、東京西航路において、周囲の状況を考慮し、次の各号のいずれにも該当する場合には、他の船舶を追い越すことができる。
一 当該他の船舶が自船を安全に通過させるための動作をとることを必要としないとき。
二 自船以外の船舶の進路を安全に避けられるとき。第六節 関門港
(特定航法)
第三十八条 船舶は、関門港においては、次の航法によらなければならない。
1(略)
2 第二十七条の二第一項及び第二項の規定は、関門航路において、船舶(第二十七条の二第二項を準用する場合にあつては、汽船)が他の船舶を追い越そうとする場合に準用する。
■海上保安庁に事故責任はあるか(その2)
法案改正に際して海上保安庁はいくつかのケースを想定したと思います。
- 勧告に従って事故がなかった場合 → 一番望ましい。
- 勧告に従わなくても事故に至らなかった場合 → 結果オーライおとがめなし。
- 勧告に従わなくて事故に至った場合 → 処分を重くする。
今回は勧告に従って事故に至ったという、恐らく想定外の事態だったでしょう。
これで海上保安庁の責任が認められなければどうなるでしょうか。海上保安庁に重い責任を認定して船の責任を軽減すれば、船の側に勧告に従うメリットが生じます。勧告に従っても、従わなくても、事故を起こせば船のせいというのでは、勧告に従うメリットが何もないことになります。これでは今後船舶が素直に勧告に従ってくれなくなる可能性があります。
ですから今回は海上保安庁に厳しく対処することが正しい対応と言えると思うのですが、どうでしょうねえ。
<国会の質疑>
第171回国会 国土交通委員会
港則法及び海上交通安全法の一部を改正する法律案
2009年6月25日(木曜日)
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/171/0064/17106250064020a.html
<関連日記>
護衛艦「くらま」の事故(1) 民族差別の罵倒が原因究明を妨げる
護衛艦「くらま」の事故(3)まとめ