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教科書検定「政府の基本的立場で実施」下村文科相
朝日新聞デジタル4月9日20:04
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下村文部科学大臣が、「教育勅語」について、「至極まともなことが書かれていると思う。軍国主義教育の推進の象徴のように使われたのが問題だった」と語った。
たしかに、使われ方はまずかったけど、中身それ自体はいいってことは、よくある話だ。で、百聞は一見に如かず、どんなものだか読んでみた。
わかりにくかった。思うに、言葉には、表面的な表現だけでは意味がわからないものがある。表現の中に含まれる特別な意味というのがあるのだが、それは時代が変わると意味不明になったりする。
たとえば「横断歩道」といえば、「(人が車道を)横断する歩道」のことだ。四字熟語に収めるために、( )の中が省略されている。字義通りなら「横に断たれた歩道」だ。現物を知らない人なら、道をスッパリ断ち切ってあるのかと驚くのではないか。
「大葬」という言葉がある。大きな葬式ではない。天皇の葬儀のことだ。この場合、「大」には天皇という意味が隠れている。どんなにでかい葬式でも、天皇以外の葬式は大葬とは言えない。こんなのも、そういった文化の中にいなければ分からないことだ。
日本書紀では「人民」に「おほみたから」とフリガナが振ってある。人民といえばネトウヨは左翼用語みたいに誤解しているが、日本書紀に出てくる古い言葉だ。「おほ」は「大」で、天皇を表す。「み」は天皇のものだから当然につく美称。「たから」は財産だ。つまり古代天皇制の時代において、人民は「天皇の所有する財産」だったのだ。「おほみたから」と書いてあっても、人民が宝物のように大切にされたわけではない。
「教育勅語」には、そういった「特別な文化の中でのみ共通理解が成立する特殊な意味を持つ用語」がかなり含まれている。それらは漢文とか、古事記・日本書紀など、歴史的教養に裏打ちされた用語だから、今の時代に読んでも直ちに理解できない。
一例を挙げれば、「徳」という言葉。徳とは、人間として持つべき優れた品性のことだ。普通は人倫道徳のことを指す。しかし日本書紀の教養世界では、そうではない。人として最も大切にすべき徳とは、天皇の支配に忠実に服することだった。
支配者に服することが、なんで一番立派な道徳であるものかと信じがたいかもしれないが、なに、いまでもお手本がある。北朝鮮では首領さまに忠実なことが、最も正しい人間のあり方だとされている。昔の日本も同じことだったのだ。
ということで、前置きが長くなったが、教育勅語の言葉の意味を、歴史的に正しく解釈して、現代語に翻訳して、その全文を読んでみよう。私は学者じゃないけど、多分あっていると思う。
教育勅語(現代文)
私が思うには、わが先祖である天照大神と神武天皇が国を始められたのは、はるかに遠い昔のことで、天皇に服することが最も正しい人の道だと確立なさった教えは、深く厚いものである。
わが皇室の支配する人民が、天皇には忠義を、親には孝行を尽くそうと、全員が心を一つにして、世々にわたってその美風を続けてきたことは、わが国のあり方として最もすぐれたところであり、教育の淵源もまたここにある。
お前たち、私の支配する人民は、父母に孝行し、兄弟仲良くし、夫婦は仲むつまじく、友達とは互いに信じあい、行動は慎み深く、他人に博愛の手を差し伸べ、学問を修め、仕事を習い、それによって知能をさらに開き起こし、品性と才能を磨き上げ、進んで公共の利益や世間の務めに尽力し、いつも大日本帝国憲法を重んじ、法律に従い、いったん危急の事態が生じたら、正義心と勇気とを公のためにささげ、それによって永遠に続く皇室の運命を助けなければならぬ。
このようにすれば、単に私に忠義で善良な国民であるというばかりではなく、お前の祖先が残した良い風習をたたえることにもなる。
このような道は、実にわが先祖である天照大神と神武天皇ら代々の天皇が残された教訓であり、皇室の子孫と皇室支配下の人民が共に守っていかねばならぬことであり、
昔も今も間違いがなく、国内および国外にほどこしても道理にかなっている。
私はお前たちわが支配下の人民と共にこの教えを心に留めて決して忘れない、皆一致して一つの道徳を共にすることを切に望む。
明治二十三年十月三十日
天皇の署名と印
■感想
よく「一旦緩急あれば義勇公に奉じ」を問題にされるけど、侵略されたら戦うのが当たり前じゃんて私は思う。ただし、それを小学生に教育するのがふさわしいかどうかは別の問題だ。それより私はほかのことにびっくりした。
それは、「之ヲ中外ニ施シテ悖ラズ」。
教育勅語を国内だけじゃなく、国外に施行しても道理にかなっているというのだ。いやいや、天皇に忠義を尽くすっていう規範は、国外で通用しないでしょう……と笑ったのだが、よく考えたらそれを大日本帝国はやったんだよね。
「八紘一宇」とか言って、戦争を広げた。八紘一宇とは「全世界はひとつ屋根の下」という意味なんだけど、その家長はもちろん天皇だ。これは初代神武天皇が政権を樹立するときの宣言なんだからね。そういった考えが、教育勅語にすでに現れているのが、ちょっと怖かった。