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沖縄の「強制集団死」についての教科書記述が確定したことについて、中身が少しわかったので、ようやく日記を書くことができます。
いろいろ批判はされていますが、教科書執筆者は頑張ったと思います。文科省の圧力をかいくぐって、なんとか真相を書き込もうとした努力が見て取れます。中には検定前の原文よりもよくなった教科書もあると思いました。
面白いのが東京書籍『日本史A』です。現代の単元に、つぎの一文が加わったのです。「2007年の教科書検定の結果、沖縄戦の『集団自決』に日本軍の強制があった記述が消えたことが問題になった。」
やるー、東京書籍
ここまでこれたのは沖縄県民の熱い運動があったからです。心からその運動を称えたいと思います。沖縄県民に連帯する本土の運動も無視できない力になったと思いますしね。不十分さはありつつも、私としては十分評価に値する成果が上がったと思います。
以下に
検定前の文章と、検定後の書き換えさせられた文章、そして再申請して確定した今回の文章を示します。カッコ内は私のコメントです。
■山川出版『日本史A』
【検定前】 日本軍によって壕を追い出され、あるいは集団自決に追い込まれた住民もあった。
(「日本軍によって・・・追い込まれた」は圧力ないし誘導。)
【検定後】 そのなかには日本軍に壕から追い出されたり、自決した住民もいた。
(「自決した」からは日本軍が関与した形跡を読みとれません。)
【今回】 日本軍によって壕を追い出され、あるいは集団自決に追い込まれた住民もあった。
■三省堂『日本史A』『日本史B』
【検定前】 さらに日本軍に「集団自決」を強いられたり、戦闘の邪魔になるとか、スパイ容疑をかけられて殺害された人も多く、沖縄戦は悲惨をきわめた。
(「日本軍に強いられたり」は強制。)
【検定後】 さらに、追いつめられて「集団自決」した人や、戦闘の邪魔になるとかスパイ容疑を理由に殺害された人も多く、沖縄戦は悲惨をきわめた。
(「追いつめられて」は誰にという主語がありません。)
【今回】 日本軍の関与によって集団自決に追い込まれた人もいるなど、・・・
(側注で「日本軍によってひきおこされた『強制集団死』とする見方が出されている」)
■実教出版『日本史B』
【検定前】 日本軍は、県民を壕から追い出し、スパイ容疑で殺害し、日本軍のくばった手榴弾で集団自害と殺しあいをさせ、800人以上の犠牲者を出した。
(「日本軍のくばった手榴弾で集団自害と殺しあいをさせ」は強制。)
【検定後】 日本軍は、県民を壕から追い出したり、スパイ容疑で殺害したりした。また、日本軍のくばった手榴弾で集団自害と殺しあいがおこった。犠牲者はあわせて800人以上にのぼった。
(「日本軍のくばった手榴弾で集団自害と殺しあいがおこった」からは強制は無理でも関与は読みとれますが、敵に投げつけるなど自決とは違う目的で配った物で集団自決が自然発生的におこったという読みとりも可能です。)
【今回】 強制的な状況のもとで、住民は、集団自害と殺し合いに追い込まれ……
■東京書籍『日本史A』
【検定前】 そのなかには、日本軍がスパイ容疑で虐殺した一般住民や集団で「自決」を強いられたものもあった。
(「日本軍が・・・強いられた」は強制。)
【検定後】 そのなかには、「集団自決」においこまれたり、日本軍がスパイ容疑で虐殺した一般住民もあった。
(「おいこまれた」は誰にという主語がありません。)
【今回】 日本軍によって「集団自決」においこまれたり、……
(則注で、「住民に敵の捕虜になるより死を選ぶ教育・指導があった」と説明。別の箇所に「沖縄県では、県議会・全市町村議会で検定意見の撤回を求める意見書が可決され、大規模な県民大会が開催された」との記述がある。さらに、囲み記事で「手榴(しゅりゅう)弾を手渡し、『一こは敵に投げ込みあと一こで自決しなさい』と申し渡した」との記述も。検定前に較べても、すごく詳しくなりました。)
■清水書院『日本史B』
【検定前】 なかには日本軍に集団自決を強制された人もいた。
(「日本軍に集団自決を強制された」は文字通りの表現です。)
【検定後】 なかには集団自決に追い込まれた人々もいた。この沖縄戦でおよそ12万の沖縄県民(軍人・軍属・一般住民)が死亡した。
(「追い込まれた」は誰にという主語がありません。)
【今回】 なかには日本軍の関与のもと集団自決に追い込まれた人々もいた。この沖縄戦でおよそ12万の沖縄県民(軍人・軍属・一般住民)が死亡した。
教科書のなかには検定前の記述がそのまま認められたので、書き換えがなかったものもありました。その会社も、今回、修正申請をしています。検定前のものより、よくなってます
■第一学習社『日本史A』
【検定前】 集団自決のほか、……日本軍によって殺された人もいた。
【今回】 日本軍は住民の投降を許さず……日本軍による住民への教育・指導や訓練の影響などによって、「集団自決」に追い込まれた人もいた。
現場で一番採用されるのが山川出版だったら、一番しょぼい記述じゃないですか。東京書籍を採用させる運動がいるかなあ。
ここで肝心なことを。「軍命令の有無」は大切なことですし、大江・岩波沖縄裁判の争点です。しかし教科書問題は「軍命の有無」ではありません。「軍の命令」という記述など、もともとどこの教科書にもなかったからです。教科書に書いてあったのは「軍の強制・圧力・誘導」に類する表現です。これについては梅澤裕隊長も認めています。
それすら認めないと言う検定意見が間違っていることは、誰が見ても明らかです。検定意見を撤回してもとに戻せという要求は、あまりにも当然のことだと思います。