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■故障していない車を交換する必要はない
憲法第9条が押し付けだというなら、農地改革も押し付けにちがいない。女性参政権もだ。いや、旧憲法では女性に財産権がなく、教育をうける権利さえ不十分だった。押し付けがいけないというのなら、こういう権利も押し付けられたのだから、すてろというのだろうか。
「いや、ちがう」という改憲派もいる。
「昔にもどせといっているのではない」
「国民投票の結果として、憲法第9条がそのまま守られるなら、それでもいい」
「ともかく、自分の手で制定すべきだと言っているのだ」
「国民の意思を反映した憲法にせよと言っているのだ」
もっともらしい理屈だ。しかしそれならば、私はこう言うだけだ。
「故障していない車を交換する必要なし。」
■憲法は長生きでよい
改憲派は言う。
「制定されて60年以上、一度も改正されていないのは、世界中で日本国憲法だけだ」
「憲法といえども時代にあわせないと、現実ばなれしてしまう」
憲法と一口に言っても、そのあり方はさまざまだ。ドイツみたいにひんぱんに憲法を変える国がある。そういう国の憲法は、中身が細かい。ドイツの憲法の長さは、日本国憲法の4倍もある。これは、日本なら一般法で定めるようなことまでを、憲法に書き込んでいるからだ。規定がこまかいほど、たびたび修正しないといけなくなる。日本でも一般法なら毎年変わっている。見方を変えれば、ドイツなら憲法改正の手続きが必要なほどの変革が、日本では国会の採択だけで、いとも簡単に行われていることになる。
本当に基本的なことだけを決めてあるのが日本の憲法なのだ。だから、そうホイホイと変えなくても良いし、簡単に変えてはならないものなのだ。