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中国艦船からの射撃用レーダー照射について、自分の意見をまとめておきたい。
■射撃用レーダー照射は敵対意思のない敵対行為だった
平和陣営の一部から、「大したことがないのに大騒ぎしている」という意見が上がっているが、間違いだ。これは銃を頭に突きつけるのと同じぐらい危険な挑発行為である。敵対関係にある軍が起こしやすい行為でもある。やる側は半分冗談でも、やられる側は極度に緊張する。
かつては米国がソ連に、ソ連が米国に対して頻繁に行っていた。そこで不測の事態が生じないように、お互いに慎もうという合意が作られていた。
しかし今回、敵対意思はなかったと思う。中国側艦船は砲身を自衛艦に向けていなかったという。撃つつもりがないことを示しながら、敵対行為をしたのだ。いわばこまわり君がやくざにそっぽを向いて「文句あるんかいや!」と毒づいているのと同じ事だ。アホかいなと思うが、まあ得てして軍人とはこういうことをする。
■中国側の動機を推測する
これは意趣返しではなかろうか。たいていの場合、こういった逸脱は「やられたから、やり返す」という単純な力学が昂じて生じるものだ。
以前、沖縄沖の海中を中国軍潜水艦が通ったが、海上自衛隊に発見されて追尾される事件があった。海自の対潜哨戒機P3Cが上空から張り付いて、一目散に逃げ回る潜水艦にソナーを浴びせてpingを鳴らし続けたそうだ。潜水艦の完全敗北であり、中国海軍は大恥をかいた。
潜水艦の領海通過は国際法で認められているけれど、浮上して航行するのが原則だ。潜ったまま外国領海を横切ろうなどと礼儀知らずなことをするから、自業自得といえる。ソナー照射は直ちに攻撃を意味しないが、指向性のソナーは射撃用レーダーと理屈は同じ事であり、ピンポイントで浴びせられた側は生きた心地がしなかっただろう。
自衛隊側にしてみれば胸のすく快挙だった。しかし中国海軍にすれば大屈辱であり、いつか雪辱を晴らしたいと誰もが思ったことだろう。今回の事件は、そういった中国海軍の心理が背景にあるように思う。
■敵対意識のエスカレートを防ごう
こういった挑発行為を繰り返して緊張を高めていくと、思わぬことで衝突する恐れが生ずる。米ソの間で結んだような、敵対行為を禁じる合意が、日中間にも必要だ。
そのためには交渉が必要なので、交渉を妨げるような本当の敵対関係に陥ってはならない。そのためには、日本も引くべき時には引かなければならない。つまり、中国側が射撃用レーダー照射の事実を否認したら、もうそれ以上は追及しないという姿勢もその一つだ。
証明しようのないことを繰り返しても、水掛け論になるばかりだ。それよりも事実究明は棚上げして、今後は敵対行為をお互いに慎もうという合意を得る方が重要だ。相手のメンツを立てながら実利を得るのだ。
また、あくまでも現場レベルのルール形成ということで話し合わなければならない。間違っても尖閣問題にリンクさせるべきではない。そんなことをしたら、相手は引くに引けなくなる。
……のだが、もうやっちゃったよなあ。
もしも合意形成に応じなかったら、どうするのか。そのときは相手にしないで、ほおっておけばよろしい。またいずれ話し合えるときが来るだろう。
■自衛隊は対抗措置をとるべきか
レーダー照射しても軍事的効果はまったくないし、戦略的にはマイナスだ。どの軍隊でも、上層部がそんな命令をすることは考えがたい。現場レベルで勝手にやった行為だろう。
そんな幼稚なことをする中国軍はレベルが低いから危険だと危機をあおり、自衛隊に事前反撃権を与えろと主張する評論家がいる。無茶な理屈だ。尖閣問題と絡めるのと同じく、愚策である。修復可能な現場レベルの逸脱を、国家レベルの対決にエスカレートさせる、最も危険な思考法だから。
外野のこんなあおりに惑わされることなく、政府には冷徹に実利だけを考えて行動していただきたい。(自衛隊はこのあたり、ちゃんとわかっているんだけどなあ)
相手を見下して対策を取るのは愚かだ。だから今回の行動で中国軍のレベルが低いと決めつけるのは早計だ。規律厳正な米軍でも、第一線兵士のそういった行為を防げなかったのだ。第一線ではそういった逸脱があり得るのを織り込んで、対立がエスカレートしないように物事を収めていく、それが政治家の役割であることを、えらい方々は、よおっく肝に銘じていただきたいものだ。
中国、レーダー照射否定=日本政府に伝達―岸田外相会見
時事通信社 2013/2/8 11:03
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