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日本など百カ国署名=外相、支援継続を約束-クラスター禁止条約、来年にも発効
時事通信 2008/12/4 01:37
■戦争違法化実現への一歩に
地雷禁止に次ぐ兵器制限条約が発効するわけで、とても良いことです。条約づくりで中心的な役割を果たしたノルウェーやアイルランドなど4カ国が提案を始めたときは、まさかこんなことが実現するとは思っていませんでした。
理想主義が現実化するのを目の当たりにできるのは、幸福な経験です。戦争の違法化に向けた小さな、しかし歴史的には大きな一歩ですね。
小さなというのは、これはあくまでも戦争の「手段」に関する制限でしかなく、直ちに戦争そのものの違法化につながるものではないからです。それから米・露・中など軍事大国が参加していないからです。
大きなというのは、“たとえ自国防衛のためであっても許されない手段がある”と各国が認めた意義が大きいと思うのです。
日本は開発途上国で続発する低強度紛争やテロリズムを防止するために、世界規模の武器輸出入監視体制を提案しましたが、これも参加国が少なくて実効性に限りがある状態です。日本と同じ危惧を抱いているはずの韓国や台湾、フィリピンといったアジア諸国と手を携えて国連で強力な運動を展開すれば、もっと参加国が増えるだろうにと思います。
■ノルウェーの矛盾
ノルウェー政府の平和外交はとても立派なんですけど、あの国はこれまでの歴史的経緯もあって、優秀な兵器を生産しています。で、かなりの兵器輸出国です。世界第7位です。これはどうなんだと思います。二枚舌とまではいいませんが、ちょっと解せないなあ。
紛争当事国には輸出しないという政策をとっていますが、ノルウェーから輸入した武器を紛争国に再輸出している不届きな国があるから、筒抜けなんですよね。チェコはノルウェーから勝った武器を、スーダンやアンゴラなどに売却しているとか。せめて武器購入国が再販禁止を誓約しなければ輸出しない、ぐらいの措置は取ってほしいものです。
■日本との対比
日本は武器を輸出していません。(武器製造に直接つながる技術も輸出していなかったんですけど、これは米国を例外とする法律ができてしまったので、かなり残念です)
戦後も長い間、日本は武器輸出国だったんですが、誰から非難されたわけでもないのに、自ら禁止したんですよね。武器輸出は憲法第9条の趣旨からして如何なものかという社会党や共産党の指摘があり、それはもっともな言い分であると自民党も同意して、武器輸出を禁止したのです。
すごいじゃないですか。ノルウェーみたいに大向こうをうならせる業績として世界から認められていませんが、それは政府が宣伝ベタなだけで、世界標準と比較すればとてもすごい決断だったんです。ノルウェーでさえ、そこまでの決断ができないんですからね。やはり憲法第9条の威力は大したものです。
■誇りうる日本の決断
自衛隊の武器は優秀だから、大量生産して価格を下げればきっと売れると思います。そうすれば国内調達価格も下がり、軍事費の節約になりますから、その浮いた分を福祉・医療や社会保障費に回せと言う要求もできるんです。
だけどどんなに財政が乏しくても、国民からそういう声が上がらない。これもすごいことではないでしょうか。背に腹は代えられないんだから、汚い商売でもいいから儲けて国民に還元してくれという要求があったってちっとも不思議じゃないのに、あえて自分の手をしばって迷わない。こんな国民は他にいませんよ。
なんでこういう業績を、もっと胸を張って世界に宣伝しないんでしょうか。きっと自民党はこれをすごいことだ、誇れる業績だと思っていなくて、しぶしぶやっているからなんでしょうね。せっかくの決断も業績も値打ちが半減です。残念なことです。
さて、話をクラスター禁止条約に戻します。いつも紹介している自衛隊専門紙「朝雲新聞」がこの問題について論評していますので転載します。
【朝雲寸言】2008/12/4付
クラスター弾の全面禁止を求める多国間条約がオスロで調印された。わが国も当初の加盟国として名を連ねている。この条約の交渉に当たっては、専守防衛の手段について手を縛るべきでないとの意見もあったが、世界の潮流を見極めて、むしろ積極的に賛成すべきとの立場を固めたものだ。
戦争が違法化された今日も、戦闘は依然として絶えない。大国の戦闘を止められないまでも、せめて、罪のない市民に被害を及ぼすような兵器を使わないようにすべきだという中小国の声がある。わが国にとっては、大国に追随してこうした声に抵抗するか、率先してこうした声を支援するかが問われていたが、今回の選択は、人道主義をリードする国として日本の国際的評価にプラスとなるだろう。
そうはいっても、将来、わが国に攻め込むかも知れない相手に、人道主義は通用しない。防衛態勢に穴が開かないようにする措置が必要であり、防衛省はクラスター弾に代えて、精度の高い弾頭を導入する方針だ。防衛構想の観点で言えば、これは、大規模な着上陸侵攻に備えるのか、それとも少人数で隠密裏に行動するゲリラやテロリストに備えるのかという問題でもある。
いずれの場合も、国土戦を前提に、国民に副次的被害を及ぼしかねない兵器は使いにくいという指摘もある。今回の決定は政治主導だったが、人道上の要請に応えながら効率的な戦い方を考える責任は、自衛隊にある。
*編集注:以下の追記は、上の記事に付けられたコメントに対する泥さんの回答です。回答内にはコメントの一部が引用されています。
■追記1
民生技術と軍事技術に垣根なんかありませんからねえ。トヨタのランドローバーを改造してゲリラが軍用車両に使っているのは有名な話ですし。PS2はミサイル誘導部品に転化できるというし。
でも、たとえば単発的に民生用品として輸入してもそれを生かせる周辺整備がされていなくて役に立たないけど、軍事用品として輸入して兵器に備えれば、地域の軍事バランスを壊してしまう技術というのはあると思います。
たとえば最新のレーダー技術や誘導技術を朝鮮が輸入したらヤバいですよね。東芝の件はココム違反でしたっけ?あれでソ連原潜のスクリュー音が一挙に静かになったとか。ソ連原潜のスクリュー音が静かになったのが東芝の機械のせいかどうかは結局分からなかったんで、ちょっとフレームアップくさいのは確かですね。ヤマハの無人ヘリ輸出問題なんか、明らかにでっち上げですよ。
自衛隊の装備ですけど、結構優秀なんですよ。特に護衛艦とか潜水艦なら中古品でも高く売れるはずです。造船技術の高さは折り紙付きだし、米軍と戦って手に入れたダメージコントロールのノウハウもピカイチだと聞きました。(フォークランド=マルビナス=戦争の時、英国駆逐艦がエグゾセで沈められたけど、あれが護衛艦だったら絶対に沈んでないそうです。)
防毒マスクだとか小物も心配りが利いていて、丈夫で品質が一定していて安全という(まあ日本製品ですから)評価が高いそうです。
陸上なら大砲ですね。それからランドローバーを軍用仕様に仕立てれば売れるかも。よく知らないけど、改造して使っている連中はその改造部分が傷んで困っているんじゃないかなあ。装甲や銃座を純正部品でしっかりした作りにして売れば、需要があると思います(中古より高いけど)。
航空ならXAAM-4ミサイルが(カタログデータでは)とってもスゴイとか。
てことで、結構売れるはずです。
>そして日本の周辺国家がここ数年軍拡しているのに対し日本はずっと軍縮しているわけで…。
>その上このように防衛能力を削減するような条約への加盟はいかがなものかと思ったり。
私もはじめはそう考えていました。海岸線で上陸部隊を釘付けにするのに地雷ほど有効な防御手段はないじゃないかと。
軍事的にはそのとおりなんですが、世の中は軍事だけで動いているのではないし、敵国の本格的侵攻を当面心配しなくていい日本は、世界に軍縮機運を広げるために条約に賛成した方がいいと思い直した経緯があります。
いわば政治的判断です。日本政府もそういう立場から賛成したわけです。もちろんその前には防衛当局とも打ち合わせていて、どうにか代替手段が確保できそうなんで、制服組の一部にあった反対論を説得できたようです。
中国なんかの軍拡については話が複雑になるので、またね。
■追記2
クラスター弾は対戦車兵器として使えるという米軍ビデオがありますが、実戦でそんな使い方がされた例を聞かないところを見ると、それはカタログ上の性能のようです。
するとクラスターは結局のところ広範囲の対人兵器にしか使えないのかも知れません。だとすれば、米軍の軍事革新計画にとっては不要ということになってもよさそうです。精密誘導弾で戦車をたたけば、歩兵などものの数ではありませんからね。
日本の防衛戦略についても同様のことが言えます。当面の防衛想定は敵の着上陸作戦とゲリコマです。まず着上陸作戦ですが、日本に上陸作戦を仕掛けてくるような敵はゲリラではないので、今述べたような戦い方をすればよいということで、クラスターは不要です。ゲリコマの場合、少人数のゲリコマにクラスターは過剰か効果がないかどちらかです。ですから日本の防衛にクラスターはいらないんです。
ただし対人兵器としては有効ですよね。そこでイスラエル軍が対ヒズボラのために200万発のクラスターをレバノン側国境地帯にばらまくなど、ひどい使い方をするわけです。イスラエルだけにその不使用を求めても聞くはずがないので、そこで全世界的に禁止することでクラスター保有国を道義的に孤立させ、廃棄に導くしかありません。日本はその一翼を担っているのですから、胸を張るべきだと思います。
防衛戦略というのは、相手が軍拡したからこちらもという単純なゲームでないことは了解していただけると思います。中国軍には渡洋能力が皆無なので、陸軍は日本の脅威になりません。だからクラスターはいらないです。
ついでに。海軍はどうも中国は自軍の戦力バランスを見失っているようで、空母みたいなものに大金を使ってくれているうちは安心です(^^)(定遠みたいなもの……と言ったら中国は怒るでしょうけど)。空軍は足が短くて話になりません。すると脅威なのは弾道ミサイルだけですが、核戦争にでもならない限り日本にとっての脅威ではありませんね。
■追記3
>不発弾踏んづけて戦車が壊れるとか足吹っ飛んだ、なんてよくあったんじゃないかなと。
クラスター弾で戦車の履帯を壊すのは無理だと思うけど、歩兵が傷ついた可能性はありますね。
クラスター弾が不発になるケースは畑など柔らかい土地に撃ち込んだ場合があり、わざと不発にする方法としては射程を短くして斜めに着弾させるなどがあります。湾岸戦争では砂漠のイラク軍塹壕にぶち込んだんだから、堀りたての柔らかい地面に着弾して大量の不発弾が出来たかも知れませんね。
>問題はイスラエルなんですがね。ここは基本防衛戦ですからクラスター弾は非常に使い勝手のよい兵器となるんで自国開発とかで今後も使い続けられそうな気がします。
グルジアもそうですよね~。
んで、イスラエルは前進防御ていうのか、攻勢的防御というのか、他人さまの土地に防御前線を置いて、しかもその外側にクラスターをばらまくという、まったくとんでもない国です。
ちょっと救いなのは(ほんのちょっとですが)、ロシアがグルジアでクラスター爆弾を使ったのははっきりしているのに、あくまでも「使っていない」と言い張っていることです。つまりすでにクラスターは「使ったことがバレると困る兵器」になっている。これが「使用をためらう兵器」になるのは時間の問題です。
条約参加国が増えればそういう道義的圧力がますます強くなるわけで、化学兵器と同様、根絶はできないまでも、いったん使ったらまともな国と見なされなくなるようになるでしょう。いまのところ、それ以上の効果は現実として困難ですね。残念ながら。
>改良(?)の方向としては不発弾率の向上とか子爆弾形状を子供がおもちゃと勘違いしやすくするとかそんな極悪な方向に行かないことを祈るばかりです……
「不発弾率の向上」はイスラエルがすでにやっているという、民間団体の指摘があります。イスラエルは認めていないので真偽不詳ですけど。それぐらいはやりかねないなあと思われるところが、あの国の不徳の致すところです。
■追記4
クラスターの不発率ですけど、どこにどんな風に撃ち込んでも1~5%は不可避だそうで、畑に着弾するとさらに不発率が増します。これは不良品というより、技術上の限界みたいです。
■追記5
地雷は戦争当事者が仕掛けるものですから、東南アジアの地雷は米軍、南北ベトナム軍、ポルポト軍などが仕掛けたものです。
また地雷は子どもだけを狙うものではなく、第一義的には地雷原に敵兵士が侵入するのを防ぐのが目的です。さらに、人を殺すのだけが目的ではなく殺傷するのが目的です。
地雷が子どもを殺すための兵器と解釈しようが、副次的に子どもに危害を加えるのだと解釈しようが、それをなくす方が良いという結論が同じなら、細かい相違は“この場”ではほとんど無意味です。
■追記6
まず、地雷の爆発に耐えられる履帯を開発するのが難しい。
履帯で踏まないで回転する鎖で地面をたたきながら地雷処理する装甲車がありますが、これに対抗するために、ジワ~ッと踏まれた時だけ爆発する地雷が開発されています。
それがもしも頑丈な履帯が開発されたとしても、いくつもの困難が待ち受けているんです。
地雷には色々あってね。
ダイヤルがついてて、踏まれた回数を関知して爆発するタイプがあります。車列の真ん中で爆発させるためですね。これだとコンバインが1台通っても爆発しません。
中には地雷が人的に撤去されるのを見越して、バネ式の信管が底についていて、持ち上げたら爆発するとか、15度以上傾いたら爆発するとかいうのがあります。こいつには踏まれても爆発しない種類があるので、コンバインでは処理できない。
これからも色んなタイプが開発されるでしょう。
ホント、難しいんです。そこで、徐々にだけど禁止する国を増やしていって、いずれは地雷を使ったというだけで非人道国家だと非難されるような国際環境に変えていくという、いまとっている戦略しかないんですよね。
■追記7
なんであれ地雷を無力化できるなら、どんな方法でも試すべきだと思います。耕耘機方式が有効なら、それに反対する人はいないでしょう。
地雷を使うのが主に武装組織というのはそのとおりなんですが、地雷を非人道兵器とする国が増えれば生産国も非難されますので、地雷を売りにくくなる効果が期待できます。いま手口のあくどい地雷を開発して売りまくっているのは中国とロシアだそうです。常任理事国のくせに。
あれは何とかせんと駄目ですね。
それとこれは蛇足みたいなことですが、正規軍は埋設した地雷の位置をちゃんと記録していますが、そこを撤退してしまえばそれっきりです。埋めた地雷をほっぽらかして撤退した、ベトナム派遣米軍の例がありますからね~。国際世論で包囲していかないと、どこの軍隊であれ、こういう所行を改めないと思いますよ。
■追記8
>アメリカや日本の地雷は自爆装置付になってるんで撤退時に自爆させたり安全に回収したりできるようになってるとか。
いや、撤退を容易にするために地雷原を敷く場合もあるので、それは考えられないですよw
それとアメリカと書いたのは一番まともそうな軍隊の典型という意味なので、実際に使ったらどこの軍隊でも似たり寄ったりですって。地雷被害の多い国としてクロアチアやボスニア・ヘルツェゴビナがありますけど、政府軍が埋設したのに後は知らん顔ですもん。相手国が困ろうと知ったこっちゃないという無責任な政府がありますもん。
まあ第二次大戦レベルの装備で戦う分には地雷は有効ですからね。国が滅びるか否かの時に人道もへったくれもあるもんかというのも、正直なところでしょう。しかしそれでもね、ほんの少しずつでも戦争形態の部分的違法化が進展しているんだから、地雷だって同じことです。
ほんの百年ほど前までは、兵士の士気を高めるために戦場での略奪許可が不可欠だとされていました。いま、いくら兵士の人件費に金がかかろうと略奪許可は出せませんね。第二次大戦では大規模な報復行為が実行されていました。いま、どれほど報復効果があっても無防備都市の住民を根絶やしにしてはいけないというのは、まともな国なら当然のこととして受け入れています。おおっぴらに強姦はできないとかもね(これはちょっと情けない例だけど……)。
子どもを中心に戦争と無関係の住民が現実に地雷被害にあっており、どうにかしなければいけないんですよね。その意見に公然と反対できる国がないところまでは、来ているんです。言い訳としては、自分たちはちゃんと管理して使うとか、防衛用だけで国境外では使わないと言うしかない所まで追い込んでいるわけです。
だから、まだまだ時間はかかるかも知れないけど、初めから不可能と決めつけることはないんでね、地雷禁止運動をやらないよりはやった方がいいに決まってるし。
そういうことです。