健全なる自衛隊に健全なる精神が宿って……ほしい

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「こうまで失態が続いたのでは、防衛省・自衛隊すべてが緊張感を欠いている、と指弾されても仕方がないのではないか。」

こう論評しているのは自衛隊専門紙『朝雲』。
*http://www.asagumo-news.com/fmain.html

この新聞、自衛隊駐屯地では必ず取っている。幹部だったらほとんど全員が購読しているんじゃないかな。娯楽室に置いてあったし、売店や食堂で売られてる場合もあって、隊員も読める。

「当直士官ら約10人は何をしていたのか」
「「あたご」に回避義務があったことはほぼ間違いないだろう」
「20年前の海自潜水艦「なだしお」と遊漁船「第一富士丸」の衝突事故も、海自側の回避判断の遅れが一因だった。その教訓を忘れたのか」

自衛隊シンパの新聞でもこれくらいの批判はする。事実認識といい、その論理といい、ネットで自衛隊擁護を唱える人々とは大違いだ。

『朝雲』は右翼政府の「力の政策」や米国の対テロ戦略も遠慮なく批判してきた。ここらへんには、私はいまの自衛隊にも健全さが残っていると思えて嬉しい。

シビリアン・コントロールっていうけど、軍事力を再び行使できる日を指折り数えて待っているのは、制服組よりもシビルの政治家の方なんではないか。一部に元気な隊員はいるが、自衛官の多くは戦場になんか行きたいと思っていない。戦場に自衛隊を出したがるのは、むしろ自分は苦労しなくていい私服組だと思う。

自衛隊は戦争しなくていい。でも「常在戦場」の精神を忘れると、今回の事故みたいなことになる。

それにしても、批判の声が大きい割に、ネトウヨがいつもより静かなように思う。きっと産経が市民批判や被害者批判をしてくれないからだ。自分たちではどうやって批判に噛みつけばいいのかわからないんだろう。屁理屈の受け売りができないんだな。ホントに智恵がないってか、わかりやすい連中だなあ。

イシバの評価については私はまだよく分からないんですけれどね、彼が省内で浮きつつあるらしいのは、腑に落ちます。

彼は制服組と背広組を統合した組織作りを推進していますよね。この意図がいまひとつ不分明で、うがって考えれば色々と推測はできますが、一つ言えるのは、この改革に抵抗する勢力が制服組にも背広組にもいるということです。

その2つの勢力が結託しているとまでは言いません。2つの勢力の利害が重ならないからね。でもどちらも互いの対抗関係の中で、薄汚れた連中が特権や利権にしがみついてきた歴史があります。双方共に、自分の茶碗にはしをつっこんでほしくない。そういう、安全保障とはかけ離れた思惑で、イシバの足ひっぱりをしているみたいです。

ではイシバはそう言った利権などと無縁な所で新しい安全保障観に基づいて機構改革を推進しているのかというと、これが判らない。旧勢力をさしおいて、彼自身が新しい利権ルートをこしらえようとしているのかも知れませんし。

まあいずれにせよ、米国の安全保障戦略の中でしか泳がないのが日本の現実ですから、誰が大臣になっても、あまり変わらないと言えるでしょう。私がせめてイシバを評価するのは、以下のような意見の持ち主である点です。

教育の議論においても「愛国心」が独り歩きしているように思えるが、そもそも愛国心は、押し付けで生まれるものではないはずだし、「思い入れや思い込みの激しい愛国心の持ち様」をアピールする言動は、「恋は盲目」と変わらない。元日や建国記念日に国旗を掲げ、「社(やしろ)」に詣でる態度は、強制したり、されたりするものではない。「国を愛するこころ」の本質は、国民一人ひとりがごく自然に持つ「国への秘めやかな思い」にあるのではないだろうか。愛国心を大上段に振りかざすことで「愛国心の本質」をかえって見誤ることを私は恐れる。
*http://www.jfss.gr.jp/jp/kihou_33j.html

でも彼のプラグマティックな防衛観は好きになれません。改憲派だし。