日本てそんなにひどい国かい?

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憲法を変えろと、ひと群れの人々がいう。
「憲法が日本をこんな国にしてしまった」と。
それほど日本はひどい国かい?

史上初めて庶民がまともに食える国になったんだぜ。
軍艦がデカくて兵隊が強くても、食えなきゃ意味ないじゃん。
この70年で殺人事件は10分の1だぞ。
強盗に怯えなくても夜道を歩けるんだぞ。
どんだけ人心が安定しているかってことだよ。

関東大震災の時は朝鮮人を何千人も虐殺したよね。
恐ろしい出来事だった。
朝鮮を支配して辛く当たってたから、仕返しを恐れたんだ。
阪神大震災の時や東日本大震災の時はそんなこと起きなかった。
人種も民族も乗り越えてみんな助け合ったよ。
仕返しを恐れなくてもいい国になったからだよ。
憲法を無視した政治のためにずいぶんひどい国にはなったけど、まだ救いはあるよ。

戦後の日本が全然ダメっていう意見は根強くある。
だけど世の中が悪くなったなんてセリフはいつの時代も同じだ。
明治時代はこう嘆いていた。
「徳川さまのころはよかった、ご一新から人が悪くなった」と。
大正時代と昭和前期はこうだ。
「明治の人というのは気骨がしっかりしていたのに今は……」
国民みんながこれ以上はないぐらい国に尽くした戦時中でさえこうだ、
「物がない? 窮屈だ? 日清日露の時代の団結はどこにいった!」
そしていまもまた
「日本人は気骨がなくなり国がバラバラで外国からなめられている」
「戦前はよかった。憲法が日本人から魂を奪った」
こんな根拠なきノスタルジーのために日本を変えられてたまるか!

いつだって国という奴は国民をカンペキに支配したがる。
でも力だけで支配は完成しない。
強いものに従うことを喜ぶ人々を育ててこそカンペキとなる。
いつだって強い者を信奉してひざまずく奴がいる。
強いものと一体化できた幻覚に酔いしれるのだ。
支配者と一緒に賢くなった気がして誇らしいのだ。

どうして戦後日本がいい国になったのか、その答えは簡単だ。
強い奴に媚びたらどうなるのか、人々が身を以て知ったからだ。
そんなのは間違っててみっともないと国民が知ったからだ。
権力の横暴とたたかうのが正しいしカッコいいと思って、そうしてきたからだ。

その心が弱くなっている。
うるさく文句ばかり言うのはみっともないし迷惑だと人々がいう。
権力なんて自分の暮らしと関係ないと人々がいう。
でもそれじゃだめだと思う人が、ようやく増えてきた。
憲法を変えられてしまう直前になって、ようやく増えてきた。
もっと増えなくてはならない。
増えつつはあるが、間に合うのだろうか。
間に合わさなくては。

憲法を変えろとひと群れの人々がいう。
「憲法が日本をこんな国にしてしまった」と。
私たちは問い返そう。
それほど日本はひどい国かい?と。
自信をもって語ろう。
そんなに卑下するなよ、日本はまだそこそこいい国じゃん。
憲法を変えろという為政者のためにずいぶんひどい国にはなったけど、まだ救いはあるよ。
もっといい国に出来るよ、この憲法があれば、と。

そしてもっともっとうるさく文句言おうぜ。
大切な憲法を守るために。

<参考>
特集ワイド:続報真相 改憲急ぐ安倍首相を応援する人々
「美しい日本の憲法」とは
毎日新聞 2016/3/18 東京夕刊
http://mainichi.jp/articles/20160318/dde/012/010/017000c