母子加算復活の意味するもの

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前の日記
「母子加算12月に復活 とんでもない甘やかしだ!(反語的投稿)」

廃止されていた母子加算が今年12月から復活するらしい。 とんでもない甘やかしである! (反語的に書いていることに注意) ■昔からいた反日売国野郎 ふざけた話だ。だいたい日本は「弱者」に甘すぎるのである。大昔からそうだった。 人民の...

の毒が効き過ぎて誤解されたので、ちゃんと書いておきますね。

1.貧しいのは生活保護家庭だけではない

この10年で世帯収入が大幅に減っています。

1998(平成10)年の1世帯当たりの平均所得は655.2万円でした。それが2007(平成19)年には556.2万円と、0.84倍に縮小しています。この間に世帯数は4449.6万世帯から4795.7万世帯に増加していますので、補正が必要です。計算すると、勤労者所得の合計額が変わっていない場合には一世帯当たり0.93倍の縮小となるはずです。が、現実にはそれ以上に収入が低下しています(数字は厚労省統計による)。

「平成20年 国民生活基礎調査の概況」厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa08/index.html

GDPは伸びて経済が成長しているのに、勤労者所得が減っているのです。これは企業が人件費や外注費を節約する傾向が強まったことを示しています。つまり労働分配率が低下しているのです。こういった傾向が続くと、まず被害を受けるのは低所得者です。母子家庭はその典型と言えるでしょう。

2.底辺の母子家庭の暮らしは生活保護家庭より貧しい

母子家庭1世帯当たりの平均所得は、働いて得る収入が平均164.8万円だそうです。月収13.7万円ですね。

公営住宅に住んで家賃が3万円程度であっても、残り10.7万円と言えば生活するのにも事欠くでしょう。しかも公営住宅にはなかなか入居できません。民間賃貸住宅なら地方都市でも最低でも5万円、普通は7万円ぐらいですよね。これだと収入の半分が家賃で飛んでしまい、とても食べていけません。

ここに児童手当などの公的給付が加わって、はじめて年収224.6万円になります。月収にすれば19万円弱です。家賃を支払い、光熱費を納めて、教育費を出して……生活は厳しいでしょう。食べるので精一杯だ。

ところでこれは所得が把握できる階層の話です。給料から所得税を天引きされている階層です。中小零細企業では、そういうことをしていない所がたくさんあります。世の中にはパート賃金から自分で国民保険を掛けなければならないシングルマザーが一杯いるんです。

そこで、母子家庭の場合、生活保護家庭より貧しいという事例が出てしまいました。

3.政策誘導で改善しなければならない

これは労働更正の問題、つまり社会政策の問題です。

企業に余裕がないのは事実でしょうが、苦境を脱すると称して労働分配率を低下させたのは問題です。利潤を株式投資などに回さず、社員にしっかり給料を支払うべきです。労働分配率をせめて10年前の水準に戻さなければなりません。

そのために政府にできるのは、最低賃金法や労働法、下請法などで賃金を下支えする役割です。労働市場の自由化などの社会政策によって社会矛盾が最下層に極端にしわ寄せされる事態を生み出したのは政府なのですから、これから反対方向の社会政策が採られねばならないのです。

4.母子加算「廃止」の意味するもの

ところが事態は逆に動きました。先に述べたように生活保護家庭と非保護家庭に所得の逆転が生じたのを利用して、その格差をなくするという理由で母子加算が廃止されたのです。

生活保護家庭の所得が上がって逆転が生じたのではありません。非保護家庭の所得が下がって逆転したのです。ならば、正しい政策は母子加算はそのままに、非保護家庭の所得を上げることだったはずです。それが、まったく逆方向に改められたのです。

5.母子加算「復活」の意味するもの

間違った政策が、いま正されようとしています。廃止された母子加算が復活します。大いに歓迎すべきことだと思います。

しかし母子加算を元に戻すのは、政府の低所得階層対策の出発点でしかありません。つぎには生活保護家庭だけでなく、すべての母子家庭のための政策が必要です。さらには低所得階層全体の収入を上げて、だれもが人間らしい暮らしが営めるように、対策を講じるべきです。

福祉・社会保障政策で政府が暮らしを支えるばかりでは財政的にとても追いつきませんから、労働更正の問題として、経済政策として、社会政策として、多面的に貧困と向き合っていく覚悟が新政府には求められています。

貧しいのは生活保護家庭だけではありません。社会を支えて働いているのに報われないすべての労働者のために、この国のありようを変えるときです。そういう政府ならば、私は大いに応援するでしょう。

5.ねたみの批判論を嗤う

「母子加算が復活すれば回る寿司を食べたい」とは何事か、といういじましい批判が散見されます。何年も爪に灯をともすような暮らしを余儀なくされた人の、たった一つの願いが「回る寿司」を食べることだったら、それがそんなに許されないことなのでしょうか。税金で寿司を食うなと言いたいのでしょうか。そういう批判は、国を傾けるほどの補助金でのうのうと贅沢三昧をしている、天下り高級官僚OBにぶつければよろしい。

幸せに恵まれなかった母と子が、たかが何千円かの寿司を食べて、さあ明日も生きていこうという勇気が得られるのならば、それで社会への信頼が担保され、それで希望が支えられるのならば、安いものです。そういうことに使われる税金なら、私はちっとも惜しいとは思いません。