恐るべきは「絶対的貧困」だ

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日本の貧困率 先進国で際立つ
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日本は豊かでも、日本人は貧しいということですね。

貧困率というのは「率」だから、こんなものはあてにならない、日本はそんなに悪い状態じゃないと書いている人がいます。

本当はどうなんだと思って具体的な数字を調べてみました。

(グラフや統計はややこしいので、資料として末尾にまとめました。)

■貧困とは世帯収入18万円以下の家庭

まず「貧困」の意味です。
それは所得中央値の半分以下の所得しか得ていない人だそうです(*資料1)。

統計は個人の所得が対象なんですが、家族・世帯で考えた方がよくわかると思います。一番新しい統計では、世帯の所得中央値は448万円です(*資料2)。その半分といえば224万円。12で割ると186.66……つまり月収18万6600円以下の世帯が貧困家庭ということです(厳密にいうとちょっと違いますが、まあおおまかに言えばそういうことです)。

民間賃貸住宅で家賃をうんと低く見て6万円として、残りが12万3300円。夫婦世帯だと一人当たり6万ちょっと。なんと、これでは生活保護基準以下ですよ! この給料で子育てするのは、結構きついだろうなあ。てか、無理かも。

こういう家庭が増えているんですよね。暮らせるようにするには、安い公営住宅が必要とされていることになります。が、日本は公営住宅の建設を年々減らしています。つまり対策が逆方向を向いています。

■政治が貧困を拡大している国、日本

ここに興味深い資料があります。
働いて得る所得から見た貧困率と、税金・社会保障を含めた貧困率の2つを比較した表です(*資料3)。それによれば、10年ほど前には、日本は働いて得る所得がわりと均等だったんです。フランス,ドイツ、ベルギー、デンマーク、イギリス、アメリカより格差が少ない。

ところが社会保障を含めると、日本はアメリカ以外の国々より貧困率が高くなっていた。つまり、ヨーロッパ諸国は、社会保障によって低所得者を助けていた。ところが日本は社会保障政策がとても弱いので、せっかく民間の努力で均等社会を作っているのに、国が格差を作り出していたのです。

これは貧乏人と金持ちの税金が(ヨーロッパに較べて)あまり変わらず、貧乏人への社会福祉が少ないことを示しています。貧乏人は税金をむしられるだけだったということです。

これは10年前の数字です。(レポートが出されたのは2005年ですが、基礎資料がそれより古いため)。この10年間、民間の賃金格差も米国並みに開いてきました。しかも社会保障は10年前よりも悪くなっている。

ということが何を意味するか、答は明らかです。相対的貧困もさることながら、日本社会が立ち向かわなければならないのは、社会を蝕み不安定化させる、絶対的貧困だということなのです。

*資料1
貧困率の意味(厚労省資料)
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/10/dl/h1020-3a-02.pdf

*資料2
厚生労働省:平成20年国民生活基礎調査の概要
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa08/2-2.html

*資料3 OECDレポート(英文)p.29 第24
http://www.oecd.org/dataoecd/48/9/34483698.pdf

<関連日記>
「貧困・格差は個人責任ではない」と主張する政府研究所のレポート

とてもよい資料を見つけたので紹介します。 「貧困」や「格差」の問題を追及した「内閣府経済社会総合研究所」の太田清レポート(2005)です。 フリーターの増加と労働所得格差の拡大 太田清 2005年5月 これは、政府におもねらない、実証的な...