北朝鮮の脅威 3 (ミサイル2)

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北朝鮮ミサイルの能力とはどの程度のものなのだろう。
日本に届く能力があるとされているものはノドンとテポドンだ。まずノドンについて見てみる。

ノドンはスカッドの改良型である。
射程を延ばすために弾頭は約770kgしかなく、保有数は最大で200発程度と見積もられている。

1,000発以上撃ち込まれたロンドンや、数百発着弾したテヘラン、バグダッドがどうであったかを見れば、それ以下の性能のノドンが200発全弾着弾したとしても、微々たる損害しか与えられないのは明らかである。

生物・化学兵器を積んであれば恐ろしいだろうが、まずそんなバカなことはしない。なぜなら戦略的に無意味だからだ。

一回使用するだけで敵が全滅するなら使うかも知れないが、そうでないなら一般市民だけを毒ガスで殺してみても軍事的合理性からは何の実利もない。

敵戦闘力に打撃とならず、いったん使えば世界から激しい非難を受けて戦略的に孤立するうえ、全面報復という敵の戦争目的に道義的な正当性まで与えて自分を不利にする手段を、どうしてわざわざ使うだろうか。

そもそも生物・化学兵器は、報復手段を持たない相手にしか使えないというのが軍事常識だ。フセインはクルド人に使っても湾岸戦争で多国籍軍やイスラエルには使えなかったし、ヒトラーもノルマンディで使うのを許可しなかった。

根本的な問題として、はたしてノドンは日本に届くのだろうか。

ノドンの推定射程は1,300kmとされているが、その根拠はこうだ。

韓国を攻撃するならスカッドで充分だ。
→それより射程の長いノドンは日本が標的に違いない。
→ならば射程1,300kmは必要だ。
→では射程は1,300kmなのだ。

冗談ではなくこれが事実なのである。これまで最大射程実験は一度も行われていない。いや、行ったのかも知れないが、結果的に400km程度しか飛ばなかった(2006年9月14日、額賀防衛庁長官記者会見)。

ノドンとパキスタンのガウリミサイルは同じものらしいのだが、ガウリも同様に500km以上は飛んでいないらしい。

これでは北朝鮮の排他的経済水域を越えるのがせいぜいであり、日本海を飛び越えて日本へ撃ち込むのは無理だ。もちろん日本の国家体制はびくともしない。

日本侵略のためにミサイルを撃ち込むという発想は、戦略目的とそのための手段が絶望的にトンチンカンである。それは仮面ライダーのショッカーが世界征服のために幼稚園バスを乗っ取るのと同程度の、子どもじみた妄想でしかない。

安倍前総理自身が書いている文章をもう一度引用しよう。

(北朝鮮が)日本に向けて、ノドンを数発発射し、万が一、着弾する、そんなことはないでしょう。金正日委員長は極めて合理的な判断ができる人だとの印象を受けた。(「『闘う政治家』宣言」『文藝春秋』2006年9月号)。

(北朝鮮が)ミサイル攻撃をする可能性は、極めて少ない。(『美しい国へ』文春新書)。

こういうことなので、ノドンミサイルの脅威などというものは皆無と言ってよい。

しかしテポドンに核弾頭を搭載して日本に撃ち込めるのなら、話は別である。
核ミサイルが一発でも着弾すれば、大変な被害をこうむることになるだろう。

軍事雑誌みたいな話ばかりでしつこいようだが、その可能性を明日はまたミサイルの性能面から検証したい。