これは凄い!進化してるオレオレ詐欺の手口

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1886713341&owner_id=12631570

【転載】

母親がオレオレ詐欺の被害者になりました。
経営コンサルタント

http://www.google.co.jp/gwt/x?hl=ja&client=twitter&u=http%3A%2F%2Ft.co%2FkdXMci6E

本当は、こんなお恥ずかしい親族の話は、そのまま闇に葬り去りたいところがあるんですが、詐欺の全貌を聞いたところ、「これは、できるだけ多くの人が知るべき情報じゃないか」と、判断したこともあり、思い切ってブログに書かせて頂くことにしました。

本来であれば、このブログは、ビジネスの役に立つ話をするべきものなのですが、ある意味、みなさんの資産を詐欺から守るのも、このブログの役目だと思ったので、2012年最後のブログとして書かせて頂きます。

「うちの親は、絶対に大丈夫だよ」
そう思った人もいると思いますが、そう思った人ほど、このブログを読んでもらいたいと思います。

うちの母親は、ごく普通の70歳のおばあさんで、特に物忘れが多いとか、ボケているわけでもありません。むしろ、物事には慎重な方ですし、過去にもオレオレ詐欺の電話が2回ほどかかってきいても、すぐに察して、無視して電話を切っています。
だから、僕自身も「うちの親は大丈夫だ」と、ずっと思っていました。

でも、今思えば、最大のミスがここにあったと思います。もし、この正月に実家に帰って、年老いた両親に会う予定の人がいれば、ぜひ、この詐欺にあった被害者である、うちの母の話をしてもらえればと思います(コピーして持っていっても構いません)。

そして、この事実をできる限り多くの人に伝えて、うちの母親のような、悲しい思いをする人を、できるだけ減らせることが、少しでも多くの人に発言する立場のある、私の役目ではないかと思った次第です。ぜひ、ご一読していただければと思います。

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25日・午後3時。

実家に1本の電話が入る。
「あ、お母さん、俺だけど」
「どうしたの?」
「電車の中に鞄忘れちゃってさ」
「あら! それは大変!」
「だから今、取引先の携帯借りて電話しているんだよ」

この時点で、自分の息子(私の兄)と疑う前に「鞄を忘れた」というエピソードに意識が向いてしまう。しかも、かかってきた電話が取引先からの電話で「非通知」という事情にも、納得してしまう。

「で、俺、今、携帯ないからさ。もし、忘れ物の連絡が家にかかってきたら、対応してくれない?」
「はいはい、わかりました」

ここで電話は切れる。
そして、10分後、今度は東京駅の拾得物担当から母に電話が入る

「えー、東京駅の拾得物担当のものですけども」
「はいはい」
「先ほど、鞄が東京駅で見つかりました」
「それは良かった!」
「で、一応、私の手元に免許証があります。まずは本人のものかどうか確認するために、名前と住所を確認させてください」
「わかりました」
「では、まず息子さんのお名前は?」
「竹内●●です」(兄の名前)
「住所は?」
「●●●です」
「一応、名刺もありますので、会社名も聞かせてください」
「はい。●●会社に勤めています」
「わかりました。これは確かにあなたの息子さんのものですね。では、本人と連絡が取れましたら、東京駅の拾得物の引き取り所まで取りに来るよう伝えてください」

この時点で、すべて兄の情報を詐欺の相手に母親が伝えることになる。
そして、さらに10分後。
再び兄の名前を語る者から連絡が入る。

「もしもし、駅から連絡あった?」
「あったあった。今、あったよ。東京駅から」
「おー、良かった! 助かったよ。ありがとう! 今から取りに行くよ」

また、電話が切れる。
そして、さらに10分後。再びニセ兄から電話が実家に入る。

「お母さん……やばいことになったよ」
「どうしたの?」
「鞄の中を確認したらさ、取引先に渡す予定だった小切手だけが抜き取られているんだよ」
「ええぇ!」
「まずいなぁ……今月中に振り込まなきゃいけないお金なんだよ」
「あらぁら!」
「俺のお金を引き出したいんだけど、ほら、さっき鞄を電車の中に忘れた時に、財布も入っていたから、銀行の口座、全部ストップしちゃったからお金引き出せないんだよ」
「それは困ったわね」
「これがバレたら、俺、会社でちょっとヤバい立場になるんだよ」
「わ、わ、どうしましょう」
「母さん、本当に申し訳ないんだけど……1日だけお金貸してくれるかな?」
「ええ、少しだけならいいわよ」
「少しだけって、どのくらい?」
「どのくらいって、急に言われても……」
「100万円とか、200万円とか、無理?」
「んー、そのくらならなんとか」
「分かった。じゃあ相談してみるから、ちょっと待ってて」

一度電話が切れて、5分後再びかかってくる。

「母さん、本当にごめん! じゃあ、200万円頼むよ。明日、銀行の口座が動かせるようになったら、すぐ返すからさ」
「わかったわ」
「じゃあ、すぐに取りに行くからさ。用意しておいて」

そして、また10分後、電話が再びかかってくる。

「ごめん!急に会議が入って抜け出せなくなった。会社の後輩が取りに行くから、そいつに渡してくれる?」
「わかったわ」
「ただ、小切手をなくしたことは会社で内緒だからさ。後輩は『書類をください』
っていうから、そいつに『書類です』といって、封筒にお金を入れて渡してくれよ」
「うん、わかった」

そして、待ち合わせの近所のスーパーに行くと、サラリーマン風の20代の男が待っている。
「後輩の●●です。はじめまして。書類を受け取りにきました」

「はい、これ」
「確かに受け取りました。では」

そして、男はテクテクと歩いて駅に向かって消えていった。

……と、こんな感じで、200万円が「あっ」という間に持っていかれました。

その後、兄から連絡がないことがおかしいと思った母は、兄の携帯に「お金は受け取りましたか?」というメールを入れると、兄が「なんのこと?」ということで事件が発覚。

その後、警察に届けを出して、竹内家の実家は葬式のように暗い年末を迎えるようになりました……。

最初に断っておきますが、私の実家はごくごく普通の家庭で、決して裕福なほうではありません。当然、200万円は大金です。おそらく、母親が万が一のためにコツコツ貯めたお金で、老後の「いざ」という時のために、とっていた虎の子の貯金だと思います。それが、自分の息子を守ろうとした善意を利用されて、まんまと騙されたわけですから、おそらく、そのショックは計り知れないものがあります。しかも、この年末です。「孫にお年玉もあげられない」そう言って、母はずっと泣きじゃくってました。

さぞかし、悔しかったと思います。

特に、こんな詐欺の手口に自分が引っかかってしまったことに、そうとう、情けなくなってしまったんだと思います。

で、ここでちょっと冷静に事件を振り返ってみたいと思いますが……まず、私が母親と警察から手口を初めて聞いた時、率直な感想としては「すげぇ」の一言でした。

本当によくできている「仕掛け」だと思いました。

ちょっと文章で書いてしまうと、安っぽいベタな詐欺商法としか伝わらないのが悔しいんですが、最初の電話の内容から、最後のお金の受け取りまでの流れは、すべて辻褄があっているし、ストーリーとしては、非常によくできていると思いました。まさに「臨場感」抜群の演出です。

オレオレ詐欺にあった被害者の家族が言う言葉ではありませんが、人から金を騙し取る仕掛けが、よく研究されています。おそらく、この一連の流れを完成させるために、たくさんの失敗をして、たくさんの仲間が捕まり、それでも、懲りずに試行錯誤を繰り返して、それで行き着いた、いわば「究極のオレオレ詐欺」であることは、やはりここで認めざるを得ません。

それともうひとつ。10分おきに電話がかかってくるところも巧妙だと思いました。相手に「おかしい」と考えさせる隙を与えません。ずっと緊張感を保たせるために、たえずストーリーを転がせるのは、1回や2回の練習では、演技をし続けるのは難しいと思います。

つまり。ここが一番、私の認識の甘かったところなんですが、「オレオレ詐欺」をやっている奴らは、バカじゃないっていうことです。いかに、確実に相手から金をだまし取るかということを突き詰めて、さらに、時代にあわせて、次から次へと「騙し方」というビジネスモデルを進化させていくというのは、決して頭の悪い人たちではできない芸当だと思いました。

「オレオレ詐欺なんてやる奴はバカだ」と、今まで事件の概要だけを捕らえて、感情だけで決めつけていましたが、その甘い考えが、逆に「私はこんなバカに騙されない」という隙を作ってしまい、結果、そこをつつかれた……というのが、おそらく、今回の一番の敗因のような気がします。

本当に、考えれば考えるほど腹が立つぐらい、この詐欺システムはよくできています。

例えば、最後の「書類」といってお金を受け取るシーンも、冷静に考えれば凄いですよね。

だって、ここは一番捕まる可能性が高い危険なポジションなんですが、もし、仮にここで捕まったとしても、そいつはおそらく、「僕は知らない人に頼まれて、書類を受け取るようにと言われただけです」という言い訳ができるので、見事にトカゲのしっぽ切りができるようになります(本当に、そこらへんに歩いている奴を1万円ぐらいで雇った可能性もあるし)。