沖縄海兵隊不要論

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鳩山さんには心底がっかりです。なにが「県外、国外」なんだか。海兵隊が何の抑止力にもならないことは何度か書いてきましたので、多分これを最後にします。政府の案がほとんど決まった以上は、書いているよりも、政府案を撤回させる行動の方が大切ですから。

今回は、まず海兵隊がどんな役割を持ち、どのように運用されるかを見ることで、海兵隊が抑止力ではないことを確認します。ついで、その役割と運用からみて辺野古基地が必要ないことを見て、それならばどうして辺野古に海兵隊がこだわるのかを考えます。つぎに、鳩山さんがだまされてしまった抑止力とはどういうものかを具体的に見ます。最後に、その抑止力がどんな影響を日本に与えているのかを見て、辺野古基地の有害性を論証しようと思います。

■海兵隊はどんな部隊で、どのように運用されるのか

海兵隊は抑止力ではありません。ジェームズ・アモス海兵隊副司令官が上院軍事委員会で証言しているとおり、海兵隊の価値は「即応態勢面」にあるのであって、海兵隊独自で本格的侵攻をくい止める能力などもっていません。

何が即応体制かといえば、海兵隊は陸・海・空の装備をもっているので、緊急の統一的運用ができるってところです。輸送船と強襲揚陸艦で兵員・装備を運び、航空戦力に守られながら海上から侵攻できるのが海兵隊の強みです。

それでは周辺有事の際に、海兵隊はどんな動きをするでしょうか。まず、空軍と協力して、岩国の海兵航空団が制空権を確保します。第7艦隊が海上を制圧し、敵潜水艦を沈めて、航路の安全を確保します。この段階が過ぎなければ輸送部隊も陸上部隊も動けません。

空軍と海軍が戦っている間に、グアムから強襲揚陸艦と輸送船がやってきます。この船には海兵砲兵隊や装甲部隊が乗っています。これに辺野古(現在は普天間)の航空輸送隊が加わり、ようやく発進です。確認しておきますが、普天間の部隊は航空輸送部隊であって、戦闘部隊ではありません。

2012年以後、沖縄に残る戦闘部隊はほとんど歩兵だけです。装甲もない沖縄の部隊を最初に戦場に送るなどという運用は論外なのです。普天間の部隊は、どうせグアムの主力が来なければ動けないのです。だったら何も沖縄にいる必要はありません。日頃の訓練のためにも本隊と一緒にいる方が便利なのですから、グアムにいればいいのです。

■海兵隊は辺野古を必要としていない

ではどうして不便を承知で辺野古に居座ろうとするのでしょうか。緊急展開用の空港が、日本にあったほうが何かと便利なのは確かです。日本は政治も治安も安定しているし、休養施設や医療体制も充実しているし、基地を作ると言えば金を出してくれるし、便利なことこのうえなしです。基地と居住地と訓練場と空港が近接しています。キャンベル国務長官代理は、そういう場所が他にあるならすぐにでも出て行くと言っています(「沖縄以外にそのような場所があれば、われわれは瞬時に移駐を決断するであろう」。日米非公式協議、1998年3月13日)。

つまりは海兵隊に都合がいいという話で、日本に都合のよいことなど何もありません。

緊急展開というのは、オバマの2010年度国防方針によれば、イランと北朝鮮の事態が考えられています。どちらも普天間や辺野古から海兵隊のヘリで直接飛んでいけるところではありません。2012年にオスプレイが配備されれば、韓国まではどうにか飛んでいけることになりますが、それにしてもかなり遠くて不便なのは事実です。

メリットといえば、朝鮮人民軍のミサイルの射程外であるということぐらい。しかしそれが大切なメリットでないのは、射程内の岩国に基地を置いていることでわかります。どうしても辺野古でなければならない理由など、どこにもありません。

■海兵隊が辺野古にこだわる本当の理由

このように考えると、辺野古にこだわる合理的な理由はないように思えます。やはり、理由はもっと非合理なところにあるのではないでしょうか。

まず沖縄が海兵隊にとって伝説の場所であること。多大の犠牲を払って手に入れた、海兵隊の聖地ですから。海兵隊といえば南米侵略部隊という悪評があったし、三軍から常に厄介な余計者扱いをされてきた歴史があります。ところが、太平洋方面で英雄となり、その存在を不動のものとしました。海兵隊の歴史博物館の建物が摺鉢山の星条旗掲揚を象っているのをみても、海兵隊にとって太平洋戦争の歴史記憶は重要なのです。しかしそんな身勝手な思い出の場所にいつまでもいられては、日本としては迷惑このうえなしです。

つぎに、沖縄には嘉手納基地という海外で最大の空軍基地があります。何かとなわばり争いの絶えない空軍と海兵隊航空団です。空軍が居続けるのに、なんで我々だけが追い出されるんだという、妙な対抗意識と、歴史的に形成された一種のひがみ意識が働いているのではないでしょうか。でもこんな事情は、こちらにとっては知ったことではありません。

■強大な抑止力の本当の姿をみる

さて、鳩山さんがコロリと引っかかった「抑止力」議論ですが。米国の抑止力は海兵隊、それも普天間などという小さな基地にあるのではありません。本当の抑止力というものを見てみましょう。

アメリカ太平洋軍は陸軍の2つの軍団、海軍の2つの艦隊、4つの空軍部隊、2つの海兵遠征軍と1つの艦隊海兵隊をもつ一大勢力で、約30万人の軍勢を擁しています。これは米国全体の軍事力の2割を占めています。アジアのどの国も、これに匹敵する軍事力を持っていません。にもかかわらず、太平洋軍はいま大増強が続いているのです。

ブッシュは米海軍の6割を太平洋方面にシフトする決定を下しましたが、オバマ政権もこれを継承しています。米国東岸から太平洋海域への海軍力再配備が進んでいるのです。米海軍のHPによれば、昨年までに米海軍の原潜53隻のうち30隻が太平洋方面に配備されました。

具体的にはロサンゼルス級原潜ジャクソンビルと米海軍最新のバージニア級攻撃型原潜ハワイ、テキサスの3隻が真珠湾に、ロサンゼルス級アルバカーキーが本土西海岸のサンディエゴに配備されました。真珠湾には今年夏に3隻目のバージニア級原潜ノースカロライナが配備されるし、これからもバージニア級が建造され次第、配備されることになっています。

航空戦力も増強されています。空母ジョージ・ワシントンが横須賀に配備されたのはその一環ですし、空母カールヴィンソンもオーバーホールが終わって、昨年現役復帰。これにともなって新部隊第1空母打撃群がサンディエゴに編成されました。

これら巨大な軍事的圧力、これがアジアにおける抑止力の正体なのです。この軍事力に立ち向かうことのできる軍隊など、どこにも存在しません。

■抑止力は平和をつくるのか

いま述べたような軍事力を見れば、米軍と、それに守られている諸国に対して戦争を仕掛けようとする国はないでしょう。その意味では、米軍はアジアの平和を守っているといえます。

しかしその圧力下にある諸国にとっては、いつその力が自分たちを締め上げる力に転嫁するか不安です。そこで、自分の持てる経済力に見合って、これに対抗できる軍事力を整備しようとするのは必然です。

中国の経済成長に伴って人民解放軍が増強されると、対抗的に米軍が増強されます。これを見て「北朝鮮」はますます北進の危機感を強め、かたくなになるし、ますます朝鮮人民軍の威力に頼ろうとします。米軍は中国海軍を台湾以西に押し込めようとしているのではないかと考える中国は、そんなことをされてはライフラインが守れないとばかりに、太平洋方面に進出してプレゼンスを強調します。

■米軍再編が日本に与える影響

このような太平洋の軍事環境の激変に、日本が局外中立を決め込むことはできません。ではどのようにコミットすべきなのか。尖閣列島などの権益対立を抱える日本は、緊張緩和につとめ、太平洋の軍拡に歯止めをかける役割を果たすのが国益に適っています。そうであれば、辺野古の新基地に断固反対しなければならないはずです。

辺野古の基地建設は抑止力という面ではさほど意味を持たないし、中国や「北朝鮮」に対してそんなに大きな脅威も与えません。そのことはすでに見ました。それなのに、軍事的合理性のない要求を唯々諾々と受け入れる政策が、周辺諸国にどんな影響を与えるでしょう。

日本が米国の属国であるかぎり、米国の戦略にいいように使われてしまうという危機感を抱かれ続けます。本来は平和的な日本の産業経済力なのに、米軍の存在と相まって、これを補完する軍事的意味を持ってしまうのです。

日本は買わなくても良い警戒感を買うことになり、それはひいては日本向けの軍備を相手国に持たせることになります。日本は侵略意図など持たないのに、本来ならば日本とは無縁の軍拡競争に荷担させられてしまうのです。沖縄県民に過大な負担と危険を負わせ、国内財政に負担をかけ、そして得られるのはアジアの緊張と、米軍にのみ有利な利便性です。なんと無駄で割の合わない話でしょうか。

日本政府の意向がどうであれ、私たち国民にとって百害あって一利もない辺野古基地建設を、私は断固として受け入れることができません。これまでは消極的に支持してきた民主党ですが、辺野古プランを押し通すというのであれば、支持を撤回するしかなくなるでしょう。

普天間基地移設「辺野古」で日米が大筋合意
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