タモさんのトホホな講演 デバッグ8(いくつものデマ)

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田母神俊雄氏が2010年11月21日に行った講演の内容を13項目に整理し、その間違いを「タモさんのトホホな講演 デバッグ」の通しタイトルで9回に分けて指摘する。

講演全体のまとめ

2010年11月21日午後2時より、姫路市民会館大ホールに於いて「田母神俊雄講演会(姫路市・姫路市教育委員会後援……トホホ)」が開催されました。 東進衛星予備校専用の受付口が設けられるなど組織動員の成果もあり、参加者は約900名。立ち見も出る盛況...

9回の目次

■元航空自衛隊幕僚長 田母神俊雄講演会 参加メモ ■タモさんのトホホな講演 デバッグ1(歴史認識) 1.自己紹介 2.歴史認識の誤りが国を危うくしている ■タモさんのトホホな講演 デバッグ2(侵略戦争...

10.情報戦に負けている日本
<田母神講演の要約>

米国が日本を占領したとき、検閲で歴史が書き換えられてしまった。米国が善、日本が悪玉という歴史です。南京30万人虐殺もそうです。米国が占領時代に公職追放というのをやって、その穴埋めに左翼を入れた。大学教授や総長などです。その連中が日本悪玉史観を教育し、それで育ったのがゲバ棒学生です。日本は左翼メディアばかりですが、それはメディアの中枢に全共闘上がりが沢山いるからです。いまだに情報戦で日本は負けている。

米国の検閲で歴史が書き換えられてしまったなどというのが被害妄想であることは、すでに指摘しました。

公職追放については、

1950年に第一次追放解除……が行われた。翌1951年5月1日にマシュー・リッジウェイ司令官は、行き過ぎた占領政策の見直しの一環として、日本政府に対し公職追放の緩和・及び復帰に関する権限を認めた。これによって同年には25万人以上の追放解除が行われた。公職追放令はサンフランシスコ平和条約発効(1952年)と同時に施行された「公職に関する就職禁止、退職等に関する勅令等の廃止に関する法律」(昭和27年法律第94号)により廃止された。(Wikipedia「公職追放」抜粋)

のですから、完全に元に戻ってしまったのです。

逆の側からの攻勢はレッドパージとしてあらわれました。

1950年5月3日、マッカーサーは日本共産党の非合法化を示唆し、5月30日には皇居前広場において日本共産党指揮下の大衆と占領軍が衝突(人民広場事件)、6月6日に徳田球一ほか日本共産党中央委員24人、及び機関紙「アカハタ」幹部といわれた人物を公職追放し、アカハタを停刊処分にした。……こうした流れのなかで、7月以降はGHQの勧告及び、9月の日本政府の閣議決定により、報道機関や官公庁や教育機関や大企業などでも日共系の追放(解雇)が行われていった。
……公職追放の指令それ自体は1952年のサンフランシスコ平和条約の発効とともに解除された。職場でレッドパージを受けた一般の労働者で復職できたものはほとんどおらず、またレッドパージを受けたことがわかると再就職先にも差し支える状態であったといわれる。(Wikipedia「レッドパージ」より抜粋)

やはり田母神さんの歴史認識は偏向していますね。

11.日本は内側から侵略されている

<田母神講演の要約>
国籍法の改正、外国人地方参政権、外国人住民基本法、選択的夫婦別姓など、日本が日本でなくなる法案が次々と出ています。自民党でさえそういう法案を出す。日本の議員は誰の代表なのか。メディアも警鐘を鳴らさない。それは中国資本がメディアを支配しているからです。CMでも、パチンコやサラ金のCMだらけでしょう。日本は内側から侵略されているんです。

日本には50万人の中国人がいます。外国人地方参政権など作れば、地方都市の2つや3つは乗っ取られてしまうんです。カナダのリッチモンドが大量の中国人移民でそうなっていて、カナダ政府は対策に乗り出しています。日本もそうなるに決まっています。

国籍法が改正されましたが、田母神さんたちが警告していたような、中国人の大量認知・国籍取得などということは起きていません。

選択的夫婦別姓を導入したら、どうして「日本が日本でなくなる」のでしょうか。そもそも日本が夫婦同姓の制度になったのはフランス民法を取り入れた明治31年の民法改正からです。それ以前は、明治政府からつぎのように夫婦別姓にせよとの布告が出ていました。

婦女、人に嫁するも、なお所生の氏を用ゆべきこと(女性は婚姻後も実家の姓を使うこと)
明治9年 太政官布達

古代から明治初期に至るまで、日本社会の中で姓を持っていた階層などほとんどありませんでした。姓を持っていた階層でも女性には姓が与えられていませんでした。たまさか何らかの事情で女性が姓を表す必要があったときには実家の姓が使われていました。そういうことを、田母神さんはたぶん知らないのでしょう。

田母神さんが大切にしたい夫婦同姓は、フランスの伝統を直輸入したものであって、日本の伝統ではないのです。田母神さんは「日本の伝統」を力説するわりに、日本の伝統について何も知らないようです。選択的夫婦別姓(選択だから同姓でもいいのだし、ならば選択的夫婦同姓と称してもいいはずですが)を導入しても日本を壊すことにはならないと思います。

外国人地方参政権が中国人による日本乗っ取りの引き金になるなどというのも杞憂でしょうね。カナダのリッチモンドが大量の中国人移民で困っていてカナダ政府が対策に乗り出していると言う田母神さんの言い分が正しいかどうか、リッチモンド市のHPなどで調べれば、それが日本の右翼系ネットだけに広まっているデマであることが分かるでしょう。

なんでこんなことぐらい調べてから語らないのでしょうか。

12.原爆慰霊祭は左翼の集会だ

<田母神講演の要約>
広島で毎年開かれている原爆慰霊祭、あそこには地元の被爆者なんか出席していません。よそ者ばっかりです。集まっているのは左翼ばかりです。

私は来年も広島で講演会を計画していますが、妨害されています。会場が取れないんです。核兵器がいけないという言論は、間違っていると思いますが、そう言うのは自由です。だったら核兵器を持てという言論も自由でなければならない。そうでなければ民主主義国とは言えません。

田母神さんには、このように原爆慰霊祭をおとしめる思想が、まことに恥ずかしいことだという自覚を持っていただきたい。

日本の原水爆禁止運動の特徴は、単に被害を語るだけにとどまらず、「二度とこの悲劇を繰り返させない」との決意のもとに、復讐心を完全に取り除いているところにあります。

アウシュビッツがイスラエルの蛮行を正当化する手段として使われているのは極めたる背理ですが、ヒロシマ・ナガサキからの訴えには、そういう背理を生み出す余地が全く存在しません。

個人的悲劇、地域的被害という感慨を超克し、これを自分自身をも含めた人類全体の過ちとしてとらえ返す思想。この高邁な人類愛の思想に裏打ちされているからこそ、ヒロシマ・ナガサキは世界思想となり得たのです。だから毎年世界中から参列者が集まるのです。

その式典に対して、こんなチンケなケチつけしかできないことを、田母神さんは自らに対して恥じるべきでしょう。

事実関係でいえば、地元の人が全然いないと言うのはデマですが、核兵器廃絶が全国民的悲願であり、全人類的目標であることを思えば、原爆慰霊祭に地元以外から多数の参加者が集まるのは、当然のことです。

しかも田母神さんは知らないのかも知れませんが、広島で開かれている平和祈念式典は、平和公園で開かれている式典だけではありません。並行してたくさんの地域式典がもたれているのです。そこにはもちろん地元の皆さんが多数出席しておられます。

北方領土返還要求の大会に元北方領土住民はほとんど参加していませんが、田母神さんは「大会参加者はよそ者ばっかりです。集まっているのは右翼ばかりです」とでも言うのでしょうか。

「核兵器を持てという言論も自由でなければならない」というのは、一般論としては正しいと思いますし、現に田母神さんは全国を回ってそのように訴えていますから、まるでご自分が言論妨害を受けているかのように言うのは被害妄想でしょう。

しかしTPOというものがあります。平和祈念式典は核兵器の廃絶を呼びかける場であると共に、犠牲者を追悼する祈りの場でもあります。そんなところに出向いて行って、みんなが嫌がるような講演をあえてするのがいい歳をした紳士のすることかどうか、これは憲法上の権利というより社会常識に属する問題ですので、よおく胸に手を当てて考えていただきたいと思います。