http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1896738056&owner_id=12631570
マイミクの在特会殲滅さんが、少年法の厳罰化を唱えています。意外で驚きました。
*http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1896721288&owner_id=39834674&comment_count=2&guid=ON&mhome=1
私はこの意見に同意できないので、その理由を述べます。
刑法の大目的は「市民社会の秩序維持」です。市民が安全・安心に暮らせるように、その秩序を守るのが目的です。「治安維持」と言い換えてもよいでしょう。
ある施策が成功かどうかは、「社会秩序の維持に成功したか否か」で計られます。刑事施策は、おっしゃるように応報刑理論と教育刑理論の折衷です。そのてんびんのどちらを重く用いるか、やり方は時代によって異なりますが、社会の秩序維持に資すれば成功だし、そうでなければ失敗です。
さて以上が前置きです。
日本の少年法は、そういう面で成功だったのか、失敗だったのか。
私は成功していると思います。
以下、論点は2つです。
1.少年法は治安維持に絶大な効果を発揮してきた実績がある。
2.少年犯罪が凶悪化し激増しているというのは、情報操作である。
1.少年法は治安維持に絶大な効果を発揮してきた実績がある
少年法が制定されたのは1947年(昭和23年)。
この年、少年による殺人は354件でした。
http://kangaeru.s59.xrea.com/toukei.html
一番新しい統計が出ている2010年(平成22年)は43件です。
http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/hodouhogo_gaiyou_H22.pdf
激減していますね。
法律が本当の意味で働き始めるには、法律を実態において支える制度と施設、そして専門家と、専門教育を受けた職員やボランティア体制が整う必要があります。予算もいるし人材育成も必要なので、こういったものの整備には長い時間がかかります。
だから、少年法が実効性を発揮するまでには10年以上かかったし、顕著な効果を発揮し始めたのは、社会的に急速に人権意識が高まった昭和40年代でした。(少年犯罪のきっちりした統計が整備されるようになったのは昭和41年です。
1948年(昭和23年)から5年ごとの殺人件数を較べてみると、
殺人 354→383→366→393→286→111→91→87→82→75→83→62→43
継続的に減り続けていますが、こんな国は日本だけなんだそうです。そして日本ほど触法少年にやさしく密接に接し、家裁調査員や保護士のような大人が継続的に係わり、教育する国はないそうです。
近年に至って少年犯罪が取り沙汰されているのは、「ありふれたこと」が「めったにないこと」になったので、体感的に不安感が強まったという要因が大きいのではないでしょうか。
2.少年犯罪が凶悪化し激増しているというのは、情報操作である
厳罰化の効果ですが、2007年に少年法が改定されて厳罰傾向を強めました。それから5年で実績を語るのはまだ早いと思います。一応、わたしは否定的です。
それというのは、次の強盗件数の不自然さに釈然としないものを感じるからです。
1948年から5年ごとの件数を示します。
強盗 3,878→1,582→2,405→2,139→705→522→788→569→726
減り続けていて、最後の数字は1993年のものです。女子高生コンクリート詰め殺人事件をきっかけに、少年犯罪の厳罰化を保守側が唱え始めたころです。
では、つぎの1993年以後の数字に注目してください。
726→1,566→1,771→713→565
この一時的ですが異常な急増は何を表しているのでしょうか。これは、犯罪が増えたのではありません。警察が「強盗の定義」を変えたのです。
非行少年が自転車を乗り逃げしたとします。これは窃盗です。ところが警察官に止められて、袖を振りきって逃げたら「強盗」に分類する。このような運用にが変えられたのです。同じ時期、強盗の急増にもかかわらず、窃盗は逆に減っているのです。
その後、少年法改定を前後して、強盗件数はまた元に戻ります。たった1年で件数が半分になるのは不自然なので、強盗の定義を元に戻したのでしょう。
保守側のオピニオン、メディアの洪水のような報道、警察の不可解な統計操作。ここに情報操作と世論誘導の影を見るのは、うがちすぎでしょうか。
最後に付け加えますが、人間には先天的に犯罪に走りやすいタイプがいます。真性サディストやサイコパスといわれる精神を病んでいるタイプです。中には少年のうちから犯罪に走る人もいます。そのきっかけはさまざまで、一概には言えませんが、環境に触発されて犯罪を起こしやすいタイプは、いつの時代も一定の比率で存在するのです。
この人たちはパーソナリティが社会と不適合を起こしているので、どのような社会的施策を用いても、完全に犯罪を防ぐことができません。もちろん、厳罰は効果がありません。教育で効果がある場合もあるけれど、いつもそうだとも言い切れません。むしろ治療の対象でしょうが、有効な治療方法はまだ存在しません。
悲しいことですが、司法的に隔離するしか、いまのところは方法がないようですね。