http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1057376191&owner_id=12631570
■ハマスもまた抑圧者ではないのだろうか
イスラエルはひどいけれどハマスも馬鹿だと言うのは「どっちもどっち」論だというので、パレスチナ難民を支援する人々に評判が悪い。イスラエルが一方的に悪いのであって、ハマスのことをいうのはイスラエルの悪逆さを相対的に免罪する効果があるというのは、分からない意見ではありません。
でもイスラエルが悪いからそれと対抗している側が百%正しいと決めつけるのは如何なものかという疑念をぬぐい去れません。ハマスもまたガザの暴力的支配者ではないのかなあ。だってガザにいたファタハ支持者はハマスの内部テロで酷い目に遭わされたんだから。
■ハマスは平和を望んでいるのだろうか
あるマイミクさんの日記に、ハマスが考え方を改めなければイスラエルと共存できないんではないかとコメントしたら、以下の意見が示されました。
>ハマースが、イスラエルと共存を拒否していた、といのはうそだと思います。共存を願って、完全に「停戦」を守っていた幹部をイスラエルは暗殺しました。こうやって和平の動きが出てくると、イスラエルは暗殺したり、空爆をしたり。「どっちもどっち」では、絶対ありません。
>ハマスはイスラエルとの停戦に合意し、攻撃を 止めている真っ最中でした。
暗殺された幹部というのはハマス政治部門のトップだったアブ・シャナブのことです。この情報は誤りだと思いますが、そこの日記はイスラエルの蛮行を繰り返させないために何ができるのかを語り合う所であって、ハマスについて語り合う所ではありません。これ以上語ると迷惑がかかります。そこで自分の日記に書くことにしました。
■停戦を守っていなかったハマスとイスラエル
先の情報は映画NAKBAの製作にもかかわった森沢典子さんから寄せられたものだそうです。現地の事情に詳しくて暗殺された幹部にインタビューしたこともある人だそうですが、それにしてはちょっと首をかしげる記述があります。
>シャナブさんは2006年夏、乗っていた車に対する戦闘機からのピンポイント空爆で爆殺されてしまいました。
アブ・シャナブが殺されたのは2006年ではなく、森沢さんが彼と話したという2003年です。彼はハマスの中では珍しくイスラエルとの共存を主張していたそうですから、殺されるべき人ではなかったのですが、2003年8月21日、暗殺されました。
もう一つ、首をかしげる記述があります。彼が暗殺される前、ハマスは停戦を守っていたと森沢さんは書いています。実際はどうだったのでしょうか。
2003年8月
12日:ハマスの自爆攻撃2件。ハマスは、停戦は継続するとの声明を発表。
14日:イスラエル軍、ハマス軍事部門のリーダーであるムハンマド・セーデルを殺害。
19日:エルサレムのバスで報復の自爆攻撃。男性・女性・子供の計20人を殺害。
19日:ハマス軍事部門の幹部は一斉に地下に潜伏。
20日:ファタハ自治政府が緊急会議でハマスなどの武装組織解体を協議。
21日:イスラエル軍、アブ・シャナブを暗殺。
■なぜ和平派アブ・シャナブが殺されたのか
あるいはなぜ武闘派幹部は生き残ったのか
イスラエルのジャーナリストはこう語ります。
暗殺に対し、イスラエル側は……いっさいの責任をなすりつけるのが通例だが、このアブ・シャナブの場合は、それもできなかった。アブ・シャナブは政治部門のリーダーとして知られた存在だった。そんな彼がなぜ暗殺の対象に選ばれたのか? イスラエルTVの軍担当記者が口をすべらせた──アブ・シャナブが殺されたのは「簡単だった」からだ、と。要するに、エルサレムのバス爆破事件後、軍事部門のリーダーたちは地下に潜伏したのだが、アブ・シャナブは通常の活動を続けており、したがって、実に簡単に殺せるターゲットだったということだ。
*http://www.onweb.to/palestine/siryo/avnery823.html
武闘派は隠れていて無事だった。しかし和平派アブ・シャナブには、隠れよという支持が下されておらず、そしてイスラエルは彼の所在を突き止めており、殺された。ハマスは和平派幹部がいなくなったので、これ幸いと停戦を破棄した。すると待ってましたとばかりにイスラエルはガザ攻撃を開始した。ファタハが協議していた「ハマス解体」はうやむやになった。和平派アブ・シャナブ暗殺によって、ハマスとイスラエル、お互いがやりたいようにやれることになったわけですね。
出来レースではないかと疑ってしまうような連携プレーですが・・・
■ハマスはイスラエルとつながっている?
この疑い、信憑性はともかくとして根拠となる情報があります。同じ日記に寄せられたコメントで知ったのですが、ハマスとイスラエル諜報機関がつながっているという情報もあるのです。
ロンドンのアルハヤト紙の政治部主幹ザキ・シェハードが、調査の結果そう唱えているのです。調べるとシェハード氏は国連難民キャンプ育ちのパレスチナ人だそうです。著書『ハマスの内幕 戦闘的イスラム主義運動の知られざる事実』は日本語訳が出ていないようですが、英語版アマゾンに要約が載っており、興味深い記述がありました。
Inside Hamas: The Untold Story of the Militant Islamic Movement
>ハマスはイスラエルの暗黙の奨励を得て台頭した。
>最初の武器を購入する現金を、ファタハ運動の弱体化を望んでいたシンベット(イスラエル国家安全保障局)から得た。
http://www.amazon.com/Inside-Hamas-Militant-Islamic-Movement/dp/156025968X
■ガザ侵攻の不思議な結末
私は今回のガザ侵攻の結末に不審を抱いています。死者は1200人でその半数以上が一般市民です。するとハマスの被害は500人程度。負傷者がその5倍として2500人程度。あわせてハマスは3000人の被害を受けたことになります。ハマスのメンバーは20,000と言われていましたので、6~7分1の被害しか受けていません。どうしてその段階でイスラエルは攻撃を止めたのでしょう。なぜ本格決戦の前にハマスは停戦を受け入れたのでしょう。
この結末は一切の過程で蚊帳の外に置かれたファタハの権威を低下させます。勝てない戦争を挑発しながらろくに戦わなかったハマスに対する反発もあるでしょうが、それを弾圧するのに充分な力をハマスは温存できました。これはハマス指導部とイスラエルの出来レースなのでしょうか。こんな陰謀論は信じたくありませんが、ハマスが主観的にどう考えていたとしても、イスラエルの手のひらで踊らされている可能性は捨てきれません。
■最終勝利者は?
けれどイスラエル政府がどんな絵を描こうとも、他民族を力で永続的に支配することはできないでしょう。今回の攻撃が中東に於けるイスラエル支配の崩壊を早めた - これだけは間違いない。私はそう思います。最終勝利者はイスラエル政府やハマスでなく、イスラエルとパレスチナの市民であるべきです。そのために自分に何ができるのか、私はそれを考えねばなりません。