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『生活保護 ヤミの北九州方式を糾す』
藤藪貴治・尾藤廣喜著
あけび書房
http://www.akebi.co.jp/html/tosyo_j_a1.html
生活困窮者にとって最後のよりどころとなるのが生活保護。
しかし、日頃ニュースになるのは、先頃北海道で介護タクシー代2億円を詐取した事件がマスコミをにぎわしたように不正受給にかかわるものが多く、日常的に生活保護受給権が侵害されているということがニュースになることは殆どなかったように思います。
そのような中で、北九州市小倉で、生活保護を受給していた男性(52歳)が、生活保護を受けられなくなった3カ月後に「おにぎり食いたい」という日記を残して餓死しているのが発見されたというニュースが、大きく報道されたことはご存じの方も多いと思います。
標記の著書は、これまで北九州市が「生活保護の適正化」という名の下に行ってきている憲法25条、生活保護法違反の生活保護運用実態について、昨年3月まで元北九州市福祉事務所に勤務していた藤藪氏と生活保護問題に長年取り組んできた尾藤弁護士(京都弁護士会)が丹念な事実調査に基づいて告発している力作です。
今回の餓死事件を含めて北九州市では、3年連続で3件の餓死事件と1件の自殺事件が発生しています。本著では、まずこの4件について、福祉事務所の違法な対応の結果、餓死や自殺に至った経過が丹念な調査に基づいて報告されています。
小倉の餓死事件の前年06年5月には門司の市営住宅で餓死後相当日数が経過してミイラ化した男性(56歳)が発見されています。このケースでは、疾病と身体障害のために働けず家賃滞納、電気ガス水道が止められた状態であり、2度にわたり福祉事務所に生活保護を申請したいと申し出ていたにもかかわらず、生活保護申請を受け付けて貰えなかったという事例です。
その前年05年1月には、八幡東区で養護老人ホームを退所した男性(68歳)が、5度にわたる生活保護申請を受け付けて貰えず、死亡4日前には雪の中で倒れているのを発見されて救急車で病院に搬送されたが治療費が払えないため当日退院して、自宅に戻った後餓死しているところを発見されています。
憲法25条をうけて制定された生活保護法は、全ての者に平等に生活保護を申請する権利を保障しています。この申請自体を認めない、そのために申請に行った人に申請書すら渡さないという扱いは、「水際作戦」と呼ばれて北九州市で特に顕著ですが、他の地域の福祉事務所でも申請自体を受け付けないという事例は多発しています。
そして小倉の餓死事件は、申請は受け付けて生活保護の受給を一旦は認めたが、その後に福祉事務所が本人に執拗に辞退届の提出を求めて、辞退届を理由に生活保護を打ち切ってしまったというケースです。
最後に、本著は、貧困が拡大している現代日本において、北九州市による違法な生活保護運用を改めさせる運動が広がっていること、その運動と憲法25条が定める「人間らしいくらし」を求めて、誰もが1人の人間として尊重される公正な社会の実現を目指す市民運動とが、つながり大きく広がっていくことを訴えています。
本書の「はじめに」と「目次」と「おわりに」が読めます。著者の正義漢に胸をうたれつつ、福祉の現状に怒りを覚えざるを得ない内容ですので、お読み下さい。
はじめに
http://www.akebi.co.jp/html/html/tosyo/075seikatuhajimeni.html
目次
http://www.akebi.co.jp/html/tosyo/seikatuhogoyamino-mokuji.html
おわりに
http://www.akebi.co.jp/html/html/tosyo/075seikatuhogo-owarini.html